【2022年1月】令和4年度税制改正大綱①
税理士法人あおば
三瀬 義男
ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。
発表! 暦年贈与課税強化持ち越し
2022年がいよいよスタートします。本年3回シリーズのテーマは、税制改正大綱から見た日本の税制の方向性についてお伝えします。 1回目は、令和4年度税制改正大綱から相続税制の方向性について確認します。本年度の注目は、なんといっても、「相続税・贈与税の一体改革」の動向です。本当に、相続対策を目的とした暦年贈与はできなくなるのか。
「相続税・贈与税の一体改革」は?
結果は…「今後、本格的に検討を進める」。つまり、本年度改正は、見送られました。 え!なぜ? この一年間の盛り上がりは何だったのか? 新聞から経済雑誌、週刊誌に至るまで、猫も杓子も「相続税・贈与税の一体改革」の話題で持ちきりでありました。 通常、大きな改正がある場合、前もって政府は、マスコミに内容をリークし、世論に税制改正の予告周知を行うのが一般的です。前回の相続税の基礎控除の引き下げについても、税制改正大綱発表前から、ある程度の情報が新聞各社に報道されていました。
暦年贈与課税見送りの理由
だからこそ、これだけ大々的にマスコミ等で特集が組まれておきながら、改正が見送られたことは不思議でなりません。 私の推測ですが、理由は二つあるのではないかと考えます。一つは、現在のコロナの状況が終息しない限り、抜本的な改正を行うことを控えたという理由です。 もう一つは、そもそも、相続税・贈与税の一体改革は、課税技術に問題があると思われます。課税技術とは、課税の事実をどのように把握し、捕捉するかということです。例えば、一体改革の趣旨は、相続時において、生前に行った贈与を相続財産に加算して、相続税を課税することです。現行、相続時から3年以内の生前贈与については、相続財産に加算して、相続税が課税されています。
長い生前贈与の把握は容易でない
一体改革では、その期間を伸長することを予定しています。期間を伸長することは、その期間の贈与履歴の把握が必要になります。例えば、相続前10年間の贈与を相続財産に加算して、相続税を課税すると仮定します。被相続人から相続人に対する贈与について、死亡前10年間の贈与の事実をどのように確認するのか? マイナンバー制度が普及していない我が国では、かなりハードルの高い改正であることは間違いありません。 では、本年度の改正は見送られたが、今後はどうなるのか? これも、私見ですが、恐らく、今回、見送られたということは、来年度以降、直ちに改正されることはないと見込んでいます。それよりも、非常に気になる事が示唆されています。それは、大綱に記載されている次の文言です。 「経済対策として、現在講じられている贈与税の非課税措置は、限度額の範囲内では家族内における資産の移転に対して何らの税負担を求めない制度となっていることから、そのあり方について、格差の固定化防止等の観点を踏まえて、不断の見直しを行っていく必要がある。」
一体改革待たず相続税課税強化の可能性も
つまり、来年度以降において、一体改革とは別に、贈与税だけの在り方を見直し、相続税の課税強化が図られるかもしれません。 今回の改正大綱の動向を踏まえて、今後も相続税対策は、さらなる計画の下で生前対策をお勧めします。
経営に役立てる医院の会計と税務
- 2022年12月26日【2022年12月】これからできる節税チェックポイント
- 2022年11月15日【2022年11月】続・令和5年3月末期限のインボイス発行事業者登録申請
- 2022年11月1日【2022年10月】令和5年3月末期限のインボイス発行事業者登録申請
- 2022年5月10日【2022年3月】令和4年度税制改正大綱③
- 2022年2月24日【2022年2月】令和4年度税制改正大綱②
- 2022年2月23日【2022年1月】令和4年度税制改正大綱①
- 2021年12月15日【2021年11月】令和3年分確定申告で注意すべきコロナ特例等
- 2021年10月14日【2021年10月】これからできる節税チェックポイント
- 【2021年9月】令和4年1月施行の改定電子帳簿保存法/紙保存できなくなる電子取引
- 【2021年8月】再考 専従者給与
- 2021年3月1日税理士の相続事件簿3 ~本当は怖い暦年贈与~
- 2021年2月1日税理士の相続事件簿2 ~物納戦略のススメ~
- 2021年1月1日税理士の相続事件簿1 ~とある経営者の悲惨な相続~
- 2020年10月1日今年の年末調整は改定が盛りだくさん 年収850万円を超える給与は増税に
- 2020年9月1日補助金・助成金の会計と税務〈下〉
- 2020年8月1日補助金・助成金の会計と税務〈上〉
- 2020年3月1日ある日突然訪れる「税務調査」~相続税編~③
- 2020年2月1日ある日突然訪れる「税務調査」~相続税編~②
- 2020年1月1日ある日突然訪れる「税務調査」~相続税編~①
- 2019年10月1日消費税改定と医業経営
- 2019年9月1日改正される年金の税制と会計
- 2019年3月1日2019年税制改正大綱を読み解く(3)
- 2019年2月1日2019年税制改正大綱を読み解く(2)
- 2019年1月1日2019年税制改正大綱を読み解く(1)
- 2018年11月1日医業でも可能な中小企業等経営強化税制の活用
- 2018年10月1日これからできる節税チェックポイント
- 2018年9月1日災害で税の減免を受ける
- 2018年3月1日相続税の世界を体感せよ!~医療法人の出資持分の承継方法~③
- 2018年2月1日相続税の世界を体感せよ!~小規模宅地の特例って…ナニ?~②
- 2018年1月1日相続税の世界を体感せよ!~ガラパゴス化!?する日本の相続税~①
- 2017年10月1日年末までの節税チェックポイント
- 2017年9月1日相続した空き家をどうしたら良いか―空き家の税務―
- 2017年8月1日配偶者控除が大幅改定どうなるパート社員の給与
- 2017年3月1日家族の・家族による・家族のための民事信託3
- 2017年2月1日家族の・家族による・家族のための民事信託2
- 2017年1月1日家族の・家族による・家族のための民事信託1
- 2016年11月1日所得拡大促進税制と決算対策
- 2016年10月1日今からできる年末までの相続対策
- 2016年9月1日マイナンバーこれからどうするか?
- 2016年3月1日幸せを遺す知恵の“話(ワ)”③
- 2016年2月1日幸せを遺す知恵の“話(ワ)”②
- 2016年1月1日幸せを遺す知恵の“話(ワ)”①
- 2015年11月1日決算対策8つのポイント
- 2015年10月1日改正されたふるさと納税制度
- 2015年6月1日いますぐ実践!財産の棚卸し③
- 2015年5月1日いますぐ実践!財産の棚卸し②
- 2015年4月1日いますぐ実践!財産の棚卸し①
- 2015年2月1日医業にも適用される投資促進税制
- 2014年12月1日償却資産税の再確認を
- 2014年8月1日増税後の消費税の損税問題を考える
- 2014年6月1日医業でも適用される所得拡大促進税制
- 2014年4月1日災害時の税務
- 2013年12月1日消費税増税に備える診療所の対策
- 2013年8月1日9月30日せまる消費税経過措置の期限
- 2013年6月1日新設された所得拡大促進税制と改定雇用促進税制
- 2013年4月1日教育資金贈与の非課税特例は慎重に
- 2013年2月1日平成25年分より適用される所得税の改正事項
- 2012年12月1日国税通則法「改正」で税務調査の何が変わるか-25年1月からの税務調査に備える
- 2012年10月1日税制改正と決算
- 2012年8月1日調査関連通達案公表で税務調査の何が変わるか
- 2012年6月1日マイナンバー法案の危険性
- 2012年4月1日確定申告後の注意点
- 2012年2月1日改正税法、今年度確定申告はこの点に留意を
- 2011年12月1日国税通則法「改正」で変貌する税務調査と医業税制
- 2011年10月1日注意したい決算事項
- 2011年8月1日平成23年度税制改定
- 2011年6月1日義援金と新寄付金控除税制
- 2011年2月1日扶養控除の改定
- 2010年12月1日共通番号制の危険なねらい
- 2010年10月1日決算の準備と対策
- 2010年8月1日平成22年度税制改定
- 2010年6月1日小規模企業共済制度の改正
- 2010年4月1日現物給与の会計と税務
- 2010年2月1日増改築と住宅税制
- 2009年12月1日お役立ち確定申告情報
- 2009年10月1日法人成りの税務会計
- 2009年8月1日税額控除を有利に利用する
- 2009年6月1日平成21年度税制改正
- 2009年4月1日消費税の基礎知識
- 2009年2月1日税引後所得を理解する
- 2008年12月1日年末調整と従業員給与の取扱
- 2008年10月1日相続税の大改正と生前贈与の税務
- 2008年8月1日MS法人との会計税務
- 2008年6月1日変わるリース会計と税務
- 2008年4月1日還付申告の税務と会計
- 2008年2月1日診療所賃借の会計と税務
- 2007年12月1日平成19年分決算の重要事項
- 2007年10月1日予定納税の会計と税務
- 2007年9月1日扶養親族の税務
- 2007年8月1日固定資産税の税務
- 2007年7月1日従業員の住民税と税務調査
- 2007年6月1日変わる減価償却制度
- 2007年5月1日ゴルフ会員権の会計と税務
- 2007年4月1日損害保険の税務
- 2007年3月1日確定申告と住民税
- 2007年2月1日税務調査(2)
- 2006年12月1日税務調査(1)
- 2006年11月1日平成18年分決算の重要事項
- 2006年9月1日親族間経費の税務と会計
- 2006年8月1日損害賠償金の税務と会計
- 2006年7月1日平成18年度税制改正を解説
- 2006年5月1日MS法人などに新たな課税-新設された特定支配同族会社課税制度
- 2006年4月1日確定申告後の年間納税額と資金計画
- 2006年3月1日税務調査と会計ソフト
- 2006年2月1日本年確定申告の注意点
- 2006年1月1日新規消費税課税業者の注意点
- 2005年12月1日パート従業員の雇用と税務
- 2005年10月1日医業税制の焦点と課題〈その4〉措置法26条
- 2005年9月1日医業税制の焦点と課題〈その3〉岐路に立つ事業税非課税制度
- 2005年8月1日医業税制の焦点と課題〈その2〉消費税(後編)
- 2005年7月1日医業税制の焦点と課題〈その1〉消費税(前編)
- 2005年6月1日家事関連費の会計と税務
- 2005年5月1日「人材投資促進税制」続報を解説
- 2005年4月1日17年度新税制「人材投資促進税制」とは
- 2005年3月1日専従者給与の活用と注意点
- 2005年2月1日本年確定申告の注意点
さらに過去の記事を表示