奈良県保険医協会

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マイナンバーこれからどうするか?

経営に役立てる医院の会計と税務 税理士 西村 博史

 ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

【2016年9月】マイナンバーこれからどうするか?

 マイナンバーを管理するサーバーの不具合を起こしたとして富士通などに対して損害賠償請求がされるとの報道がされました。

 本年9月には、医院宛てに社会診療報酬支払基金からマイナンバー収集キットが郵送されることになっています。

 支払基金は民間業者である㈱シーイーシーに収集を委託しています。医院でもマイナンバーの実務が始まろうとしています。

あくまで任意の制度

 事業主には、マイナンバーを提供すべき「義務規定や罰則がない」これが、マイナンバー制度のポイントです。番号法第6条で、「施策に協力するよう努めるものとする」と努力を求めるにすぎません。

 支払基金も、保団連の質問に対し「ご協力をお願いする」立場と回答しています。

罰則や不利益もなし

 学校医など報酬支払に際してもマイナンバー提出は任意です。

 国税庁も、マイナンバーの記載の有無による不利益取り扱いはしないと回答しています。一部の報道や行政窓口ではあたかも「強制」であるかのような対応をする例も散見されるようですが、もともと任意であるものを強制しようとするところに既に制度の破綻が見え隠れしています。

社員からのマイナンバー収集

 従業員からマイナンバーを取集する場合、医院での安全管理体制の整備が必要です。

 マイナンバー取扱者を限定する、漏えい防止措置をとる、施錠管理をする、法定期間を超えてマイナンバーを保存しない、取扱規定を整備する等の体制を整えましょう。

 体制が整わずに漏えい等を起こした場合罰則の規定があります。

法案の趣旨は何か

 政府の説明では、医院窓口でオンラインにより保険情報確認が可能となり、過誤調整が減少するなどの活用例が挙げられています。しかし、3千億ともいわれる膨大な国家予算を投入してまで創設する理由には乏しいものです。

イギリスでは制度を廃止

 マイナンバー制をどんなに活用しても、国外所得や事業所得の完全な捕捉は不可能である事は政府が認めています。

 医療、年金、雇用、生活保護など社会保障全般にわたり給付と負担を個人単位で把握する「社会保障個人会計」導入が可能となるなど、受益者負担の考えによる制度運用により、社会保障の理念が根本から覆されることが危惧されます。

 イギリスでは国民IDマイナンバー制を導入したがその後廃止したと報道されています。

 マイナンバー取扱い実務が開始する今こそ、医院と患者の膨大な個人情報を不完全なシステムと政府官僚の手にゆだねる危険性を考慮し、慎重な判断をすべきであると言えます。

経営に役立てる医院の会計と税務

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