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相続税の大改正と生前贈与の税務

経営に役立てる医院の会計と税務 税理士 西村 博史

 ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

【2008年10月】相続税の大改正と生前贈与の税務

 毎年年末になると将来の相続税の節税を目的に生前贈与を実施される院長も多いと思います。今回は、生前贈与に焦点をあて、予定される相続税大改正と注意点を解説します。

110万円枠内の生前贈与

 別表のように贈与税の税率は相続税に比べてはるかに高い税率になっています。相続開始前3年より以前の古い贈与は贈与税だけで相続税は課税されません。そこで高い税率で贈与税を課税し、生前に相続財産が少額の贈与税だけで贈与されてしまう事を防止しています。

贈与税税率表

贈与金額(基礎控除差引後)
税率
200万円以下 10%
200万円超 300万円以下 15%
300万円超 400万円以下 20%
400万円超 600万円以下 30%
600万円超 1000万円以下 40%
1000万円超 50%

相続税税率表

法定相続分の金額
税率
1000万円以下 10%
1000万円超 3000万円以下 15%
3000万円超 5000万円以下 20%
5000万円超 1億円以下 30%
1億円超 3億円以下 40%
3億円超 50%

 将来多額の相続税が課税される心配がある場合、将来の相続税の予定税率がどの程度であるかが重要です。将来の相続税率より低い税率での贈与を実行することにより、結果的に節税となる仕組みです。

 贈与税は、1月1日から12月31日までの贈与に対して、翌年3月15日まで申告納付します。贈与を受けた人は、その贈与の財産価額が年間110万円の基礎控除を超える場合は申告をする義務がありますが、110万円以内であれば申告義務はないことになります。110万円の枠は、贈与を受けた人の年間の基礎控除ですから、複数の人から贈与を受けた場合にはその合計金額が110万円を超えるかどうかで判断します。

調査で問題となる贈与

 相続税の調査において頻繁に問題となるのは、実は贈与の事実があったかどうかの認定です。贈与を受けた人は贈与と主張しますが、①贈与の申告がない、②書面がない、③筆跡が被相続人のものでない、④印鑑が被相続人のものかどうか判別できないなどが否認される代表例です。110万円の枠にこだわらず120万円贈与して少額の贈与税を払う、贈与証書を作成する、印鑑は実印を使用する、筆跡は本人のものとするなどを励行すればこれらのトラブルは防止できるはずです。

大改正が予定される相続税

 現在相続税制度の大改正が予定されています。被相続人の財産全体が、5000万円と法定相続人の数に1000万円を掛けた金額の合計額の基礎控除を超える場合には、相続税が課税されるのが現在の仕組みです。今後は、相続人各自が実際に相続した財産から相続人ごとに基礎控除額を控除して相続税を課税する方法となる予定です。

 そこで、将来相続人が相続する予定の財産がその相続人の基礎控除をどの程度超えるかどうかという判断をして贈与しなければならなくなります。基礎控除を超えて相続するのであれば生前贈与は節税となりますが、基礎控除以下の財産しか相続しないのであれば逆に贈与をするメリットはなくなります。改正される基礎控除は、2000万円など様々に噂されていますが、まだ決定されていません。従来とは違い、本年の贈与については、以上のような不確実な点を考慮にいれながら実施するかどうかを含め検討する必要があることとなります。

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