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今からできる年末までの相続対策

経営に役立てる医院の会計と税務 税理士 西村 博史

 ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

【2016年10月】今からできる年末までの相続対策

 平成27年から相続税の基礎控除が40パーセント減額され、申告対象者が従来の5割増しになるとされています。相続税対策の基礎を考えます。

相続税の概算を知る

 まず相続税の概算を知って、節税対策が必要かを確認します。相続税基礎控除は、3000万円と法定相続人の数×600万円の合計額です。妻と子2人なら4800万円以上の財産があれば相続税が課税され、遺産1億円の場合相続税は、3500万円となります。別表1で相続税の概算(配偶者は配偶者控除後の金額)を知って下さい。

別表1 相続税概算(万円)
相続人 妻だけ 妻と子1人 妻と子2人 妻と子3人
1億 0 385 315 262
2億 972 1670 1350 1217
3億 4284 3460 2860 2540
相続人 子1人 子2人 子3人 子4人
1億 1220 770 630 490
2億 4860 3340 2460 2120
3億 9180 6920 5460 4580

贈与したつもり!?

 税務調査での相続税トラブルの代表は、贈与したつもりの財産にも相続税が課税されることです。未成年の子供貯金、毎年110万円以内の無申告贈与、印鑑の使い回し、遠方の子供への贈与が親の住所地の銀行にある等々は、税務署に否認される可能性が大です。贈与契約書を残し、贈与された者が使用収益する、銀行印は贈与を受けた者の日常使用する印鑑、できれば申告するという定石を守って贈与することが大切です。

毎年の贈与を繰り返す

 1月から12月の贈与を翌年3月15日までに申告します。贈与の効果は、人数×年数で飛躍的に高まります。毎年200万円を10年間2人の子に贈与すれば、4000万円の遺産が課税対象外となります。

 贈与前770万円の相続税が180万円となり、節税効果は別表2のとおり440万円となります。

 ただし、遺産の金額とのバランスを超えて贈与すると節税効果がなくなりますので、要注意です。

別表2 贈与の効果(万円)
子1人 子2人 子3人
相続税 贈与する前 1220 770 630
10年間の贈与税 年100万 0 0 0
年200万 90 180 270
年300万 190 380 570
贈与後の相続税 年100万 920 470 212
年200万 680 180 0
年300万 480 0 0
差引節税額 ①-②-③ 年100万 300 300 418
年200万 450 410 360
年300万 550 390 60

小規模宅地の評価減を再検討する

 小規模宅地の評価減は、被相続人が相続開始の時に居住していた330平方メートルまでの宅地が最大8割減額となる制度です。条件をチェックして、この規定が使えるように準備します。

  1. 妻が相続した場合は無条件に該当
  2. 同居していた親族が相続した場合は、相続税申告期限まで所有すること
  3. 別居親族が相続した場合には、被相続人と同居する妻や親族がなく、相続税申告期限まで所有し、相続前3年以内にその相続人が持ち家に居住していないこと

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