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相続した空き家をどうしたら良いか―空き家の税務―

経営に役立てる医院の会計と税務 税理士 西村 博史

 ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

【2017年9月】相続した空き家をどうしたら良いか
―空き家の税務―

 空き家が増加しています。2033年には、全国の住宅の3戸に1戸が空き家になるとの想定も行われています。相続登記されず放置された土地面積が九州よりも広いとの報道もなされています。ドクターからも「住まなくなった空き家をどうしたらよいか」という税務相談が多々寄せられるようになりました。今回は、決して他人事ではない空き家の税務を取り上げます。

相続後3年以内に自宅を譲渡した場合には空き家特別控除

 被相続人が居住していた土地建物を相続し、平成28年4月1日以降、平成31年12月31日までの間に譲渡した場合、譲渡益から3千万円を控除する空き家特別控除の特例が設けられました。

 相続開始以後3年目の12月末までに売却することが最も注意すべき条件です。建物は昭和56年5月31日以前に建築されたこと、マンション等の区分所有建物でない一戸建てであること、相続直前に被相続人以外に居住していた人がいないこと、売買代金が1億円以下であること、耐震構造でない場合には建物を取壊しして売却することなどが条件です。

 しかし、相続開始時に被相続人が介護施設に長期「入居」しており、既に自宅には戻っていなかった場合には、この特例は適用されません。介護施設でなく病院に入院している場合や短期の介護施設入所の場合はなお自宅と認められ控除の対象となります。

 もし自宅に戻ることはなく施設入居が続くのであれば、生前に、しかも居住しなくなってから3年目の12月末までに売却すると、従来から認められている通常の3千万控除の特例を適用できます。

自宅を所有していなかった親族が被相続人の自宅を相続した

 親族が、被相続人が居住していた空き家を相続した場合には、相続税が減額される「小規模宅地の評価減」という特例があります。330平方メートルまでの土地の価格が80%減となる特例です。

 空き家である場合、子やその配偶者名義の自宅を所有していない子が相続する場合に適用されます。

 親が相続時に介護施設に入居していたとしてもこの特例は適用されます。この点は、空き家譲渡の3千万控除とは異なる取扱いとなっています。

自宅を取り壊した場合にはどうなるか

 自宅を取壊し、更地にした場合固定資産税が大幅に増加する場合があります。住宅建物の固定資産税はゼロとなりますが、住宅が建っている土地の固定資産税を本来の6分の1とする特例措置などが受けられなくなります。

 結果的に固定資産税が大幅増加となる可能性が大きいことになります。

 また、平成27年法改正により、放置すれば倒壊等する場合など一定の条件に該当する場合には「特定空家等」となり固定資産税の減額特例を受けることができなくなりました。自宅を維持修繕する場合の費用と取壊した場合の固定資産税の増加や取り壊し費用を比較しながら判断する必要があります。

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