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災害時の税務

経営に役立てる医院の会計と税務 税理士 西村 博史

 ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

【2014年4月】災害時の税務

 災害等の税務はほとんど知られていません。しかし、大規模災害だけではなく、最近のゲリラ豪雨や日常的な白蟻被害など、その適用は意外と広範囲にわたります。今回は、災害盗難横領などの非常時の税務について説明します。

災害の範囲は広い

 自然現象の異変による震災、風水害、火災、冷害、雪害、干害、噴火その他、人為による異常な鉱害、火薬類による爆発その他、生物による異常な害虫、害獣による災害が災害とされています。一見すると大規模災害のみと判断しがちですが、最近のゲリラ豪雨、降雪、日常的な白蟻被害なども災害に該当します。

 これらの、災害による被害が生じたら、税の軽減があることを忘れないようにします。

 また、盗難や横領も対象となりますが、詐欺や恐喝は含まれません。

住宅などの雑損控除

 生活に通常必要な住宅、家具、衣類などが災害等により毀損した場合が対象となります。但し、事業用の資産、別荘、30万を超える貴金属などは対象となりません。

 災害等によりこれらの資産の時価が減少した場合、その減少額がその年の所得から控除される仕組みです。

 また、災害により住宅家財などを原状回復するための修理費用など災害関連支出がある場合には、時価減少額と災害関連支出のいずれか多い金額が控除対象となります。

 いずれの場合も一定の足切り額が設けられています。

 なお、その年の所得から引ききれない雑損控除の金額は、翌年以降3年間の繰り越しが認められています。

診療所などの資産損失

 診療所などの事業用資産について、災害などにより損失が生じ取壊等した場合には、診療所建物などの帳簿価格が資産損失として必要経費に算入されます。回復費用などは、通常の必要経費となります。但し、原状回復を超えて改良等した場合には、新しく資産を取得したものとして減価償却の対象となります。

災害減免法の適用

 住宅や家財などについて災害等により損失を受けた場合で所得金額が1000万円以下である場合には雑損控除の適用を受けずに、災害減免法の適用を受ける方が有利な場合があります。

 例えば、所得金額が500万円以下の場合には所得税の全額が免除されることになります。

 ゲリラ豪雨による漏水、白蟻被害など本来税の軽減があるにもかかわらず適用を受けていない場合が多々見受けられるようです。忘れず適用を受ければ大きな節税につながります。なお受け取った保険金は損失から控除して計算することとされています。

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