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ある日突然訪れる「税務調査」~相続税編~②

経営に役立てる医院の会計と税務 税理士 三瀬 義男

 ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

【2020年2月】ある日突然訪れる「税務調査」
~相続税編~ ②

 突然ですが、皆様へ相続税クイズです。相続税の税務調査の中で一番申告漏れが多い財産は次の内どれでしょうか?

 ①現預金 ②土地 ③有価証券 ④生命保険金 ⑤動産

 正解は、①の現預金です。申告漏れが多いということは、税務調査における重点財産であるということです。皆さんにとっては、少し意外に思うかもしれません。通常、預金は銀行にて残高証明書を発行してもらうため、申告財産から漏れる可能性は低いのではと。

 しかし、ここに意外な落とし穴があります。それが名義預金の問題です。名義預金とは、被相続人が自分以外の名義で行った預金をいいます。お金の出どころが亡くなった人であれば、たとえ名義が家族のものであったとしても、それは家族の固有の財産ではなく、亡くなった人の財産なので、相続財産として申告しなければなりません。

 相続税調査の現場でよくあるケースは次の通りです。亡くなった夫から妻に渡したお金を、妻が自分の口座に入金していたというケースです。専業主婦で、親の遺産も相続していない妻に多額の預金があったら、まず間違いなく名義預金の疑いがもたれます。税法は夫婦間の感情は蚊帳の外です。内助の功により夫に尽くしたといえども、税法上、お金の原資が夫に帰属しているのであれば、夫の相続財産となります。極端な事例になりますが、生活費として妻に渡したお金の余り(へそくり)を妻名義に蓄積されておれば、その財産は夫の相続財産になります。

 また、他の事例として、名義預金には妻や子名義のほかに孫名義に作られている口座も多々あります。未成年の孫名義の預金通帳に、祖父が毎年110万円を振り込み、印鑑と通帳を祖父が管理していたというケースです。孫は未成年で、その上、親権者である親も知らない預金であったため、お金をあげる人ともらう人の意思確認ができず、単に祖父が孫の名義を借りて預金をしていたという形となり祖父の相続財産として認定されます。

 長年の家族間のお金のやり取りは様々で曖昧なものも多く、名義預金か否かはグレーゾーンです。だからこそ、名義預金対策としては、しっかりと証拠を残しておくことです。孫への贈与であれば、祖父と孫の親(祖父の子)との間で親権者の合意のある贈与契約書を取り交わすこと。そして、通帳と印鑑も親権者である孫の親が管理することを取り決めておけば、贈与が認められ、税務調査で名義預金として否認されることはありません。

 配偶者や子・孫にできるだけたくさんのお金を残し、相続税対策を実行する。大切なことは、正しい方法で行うこと。やり方を間違ってしまうとかえって損失を招く結果になるとも限らないので気を付けてください。

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