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【2021年8月】再考 専従者給与

経営に役立てる医院の会計と税務税理士 西村 博史

 ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

【2021年8月】再考 専従者給与

 2018年に配偶者控除や扶養控除(以下配偶者控除等)制度が改定され、所得が1000万円を超える院長の所得税計算上、配偶者控除等は適用されなくなりました。
 親族を青色事業専従者とする上で、ポイントとなる点を確認しながら、あわせて専従者が適用できる小規模企業共済等について説明します。

院長所得1000万円、2500万円の壁

 院長所得が900万円を超えると、配偶者控除等が段階的に縮小され、1000万円を超えると配偶者控除等の控除額はゼロとなります。
 併せて、2020年分からは、院長所得が2500万円を超えると、院長自身の基礎控除もゼロとなります。院長の所得税及び住民税増税額は、院長所得が1000万円を超えた場合には約16万円程度、院長所得が2500万円を超えた場合には約43万円は程度となります。

青色専従者給与の条件と贈与税課税

 親族に対して青色専従者給与を支払う場合次の4点の検討が必要です。
①労務の対価として相当であること
②他の者の配偶者控除等の対象となっていないこと
③年間を通じて6か月以上もっぱら医院の事業に従事していること
④青色専従者給与の届出書を所定の期限までに提出していること
 たとえば、親族等が医院の業務以外にパートなどで勤務している場合、診療所に「専従」していないこととなり、原則的には専従者となりません。また、あまりに過大な専従者給与は、経費とならず、受け取った専従者に贈与税が課税される場合があります。

措置法26条適用の場合専従者給与は無駄か

 措置法の概算経費で申告している場合、保険診療部分(自費診療以外)にかかる所得については、専従者給与は概算経費に含まれることになります。そのため、専従者に対して課税される所得税等が無駄となり、増税となることもあります。しかし、労務の対価として相当である給与は、専従者の財産であり、将来の院長の相続税の対象とはなりません。つまり、労務の対価として相当な専従者の給与は、専従者の贈与税の対象とならず、さらに院長の財産とみなされることもありません。院長の所得や財産が一定額以上ある場合の相続税対策として専従者給与は有効な場合があります。

小規模企業共済の活用

 小規模企業共済は、個人事業主及び専従者の退職金制度であり、経産省傘下の独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営する共済制度です。制度改定により、専従者も加入することができます。掛け金は、全額支払った専従者の所得控除対象となります。月額1000円から7万円までを支払うことが可能であり、医療法人は加入資格なく、常時使用する家族従業員以外の従業員5名以下の個人診療所が条件です。
 なお、加入時に5名以下であればよく、その後従業員が増加しても脱退する必要はありません。また加入12か月未満で解約の場合掛け捨てとなる場合があり、途中解約した場合不利になることもあります。65歳以上で退職等し共済金を受け取った場合には、退職所得控除や1/2課税の大変有利な税制の適用があります。

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