奈良県保険医協会

メニュー

税引後所得を理解する

経営に役立てる医院の会計と税務 税理士 西村 博史

 ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

【2009年2月】税引後所得を理解する

 確定申告時期が到来しました。何度も申告を経験していても、税額の多寡に注目するあまり税引後所得の意味を考えない場合が多いようです。今回は、税引後所得と医院の資金留保の計画を考えます。

超過累進税率とは

 所得税は、別表一のように最低5%から最高40%まで6段階の税率となっています。例えば課税所得が300万円の場合には、195万円までについては税率5%が適用され、195万円を超える105万円についてだけ次の10%の税率が課税されるという仕組みです。これを超過累進税率と呼びます。所得が高くなるに従い、一定の金額を「超過」した部分の金額についてだけ次の「累進」税率が適用されるという意味です。

 これに対して住民税(県民税と市民税所得割)は所得の多寡に関係なく10%の均一税率となっています。

税額は速算表で計算

 このような所得税額の計算は、別表1の速算表で計算すると便利です。例えば課税所得900万の場合、900万×33%-63万6千円となりますから、233万4千円が計算されます。これは、900万について一旦33%の税率で計算しその後33%未満の税率が適用される部分の所得について計上しすぎた税額を差引くという方法です。この速算表では住民税を含めた金額を計算しています。

税引後所得を計算する

 逆に、課税所得に対して税引後所得を計算する場合には別表2のようになります。但し、この表では税引後の「課税所得」が計算されます。「所得」から社会保険料や扶養控除などの所得控除を差引したものが「課税所得」ですから、別表二の結果に所得控除を加えたものが税引後の「所得」となります。これを見ると課税所得900万を境に大きく留保率が減少していることがわかります。医院の課税所得が900万円以内(所得控除を400万とすると概ね1300万円程度の所得)であれば、税負担割合が比較的少なく資金を効率的に留保する事ができることになります。これを超えると増えた所得の43%または50%は税額となります。

計画的資金計画に利用する

 診療所をめぐる経営環境は年々厳しくなります。今後医院経営を考える場合、5年後10年後のライフサイクルを考え必要な税引後の所得を計算することが必要です。医院の収入や経費の短期長期の計画や目標を立てる場合に、税引後所得を基礎とした金額が計算できることになります。

別表1 所得税及び住民税速算表

課税総所得金額等 税率% 控除額
以下
1,950,000 15
1,950,000 3,300,000 20 97,500
3,300,000 6,950,000 30 427,500
6,950,000 9,000,000 33 636,000
9,000,000 18,000,000 43 1,536,000
18,000,000 50 2,796,000

別表2 税引後課税所得速算表

課税総所得金額等 留保率% 加算額
以下
1,950,000 85
1,950,000 3,300,000 80 97,500
3,300,000 6,950,000 70 427,500
6,950,000 9,000,000 67 636,000
9,000,000 18,000,000 57 1,536,000
18,000,000 50 2,796,000

経営に役立てる医院の会計と税務

さらに過去の記事を表示