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予定納税の会計と税務

経営に役立てる医院の会計と税務 税理士 西村 博史

 ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

【2007年10月】予定納税の会計と税務

 既報のように本年は所得税と住民税の税率改定があるためほとんどの診療所では所得税が増加します。更に予定納税の金額も例年とは異なるため来年の確定申告税額は更に増加します。今回は、改訂の谷間で変化する予定納税と確定申告税額を解説します。

診療報酬と予定納税

 予定納税は、前年の年間所得税額が15万円以上の場合に、本年7月と11月の2回に分け、その前年の税額の3分の1ずつ合計3分の2の金額を前納する制度です。前納制度であるため、翌年3月15日の確定申告時に精算されます。

 また医業の場合、社会保険診療報酬については、所得税が毎月の報酬から源泉徴収されていますが、この診療報酬に対する源泉徴収税額を差引した後の税額が15万円以上の場合に差引後の3分の1の金額を前納することになります。

増加する確定申告時税額

 予定納税額は前年税額の3分の2ですから前年対比で所得額の変動がなければ、確定申告時の税額は残り3分の1になるはずです。

 しかし、平成19年分には住民税と所得税の税源移譲による税率改定があったため、課税所得金額がおおよそ900万円を超える場合には、平成18年と所得が同額であっても、住民税が減少し所得税が増加します。

 更に、予定納税額は、原則として旧税率である平成18年分税率を適用した税額で計算されることになっています。そこで、課税所得が900万を超える医業所得者の場合には、予定納税額は平成19年分の年税額の3分の2より少ない金額となり、逆に3月の確定申告時の税額は増加することになります。

 別表の事例によると課税所得2000万の場合には、平成18年には76万であった確定申告時税額が平成19年には118万となり42万と大幅に増加することになります。

既に減少している住民税

 所得税と違い住民税には前納制度はなく、現在支払っている住民税は平成19年度分です。また、ほとんどの診療所の場合には、この住民税は税率改定により前年に比して既に減少しています。住民税と所得税の合計税額は同額となる税率改定ですが、平成20年3月の確定申告時には、住民税減少の思わぬ余波が来て所得税が増加することに注意が必要です。

別表

平成18年分

(単位:万円)
課税所得
金額
旧税率
年税額
社保報酬
源泉額
源泉税控除
後税額
予定
納税額
差引確定
申告税額
1,000 177 150 24 16 8
2,000 491 250 228 152 76
3,000 861 350 498 332 166

平成19年分

(単位:万円)
課税所得
金額
旧税率
年税額
社保報酬
源泉額
源泉税控除
後税額
予定
納税額
差引確定
申告税額
1,000 176 150 26 16 10
2,000 520 250 270 152 118
3,000 920 350 570 332 238

(注)平成18年分は特別減税があったため、源泉税控除後税額は年税額から源泉税額を控除した金額に一致しません。


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