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パート従業員の雇用と税務

経営に役立てる医院の会計と税務 税理士 西村 博史

 ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

【2005年12月】パート従業員の雇用と税務

 年末調整の時期を控え、診療所で雇用される正社員やパート社員については、夫の配偶者控除の対象になるか、など税務に関連する問合せが頻発します。今回は、パート従業員の雇用と税務について考えます。

103万円以下の給与の場合

 診療所に雇用される従業員が、従業員の夫(又は妻)の控除対象配偶者となるには、所得税法では、従業員の年間の所得が38万円以下である事が必要です。給与所得のみの従業員である場合には、1年間の給与総額が103万円以下である事が必要です。

 これは、給与所得者の場合、年間最低でも65万円の給与所得控除が認められており、103万円から65万円を差し引くと38万円以下の所得となるからです。配偶者控除を受ける事のできる者を控除対象配偶者と言います。

141万円以下の給与の場合

 従来、年間所得が38万円以下の従業員は、上述の配偶者控除と共に配偶者特別控除を別途受ける事が可能でした。しかし現在では、年間給与総額103万円以下の従業員は、税法改正により配偶者特別控除を受ける事ができなくなり配偶者控除のみの適用となります。

 他方、年間給与総額が103万円を超え、141万円以下の従業員は、上述の通り夫などの所得計算上配偶者控除の適用はありませんが、配偶者特別控除を受ける事ができます。

専従者に該当する場合には

 夫などの専従者となっている従業員を雇用した場合には、以下の注意をします。

 従業員が、その青色申告をする夫などの営む個人事業の青色事業専従者となり夫などから専従者給与の支給を受けている場合や、夫などの白色申告の事業専従者となっている場合には、その従業員は夫などの控除対象配偶者とはなりません。

 これは、税法上専従者に該当する者は、同時に配偶者控除を受ける事ができないからです。

専従者になっている従業員を雇用した場合には

 その従業員は夫などの配偶者控除を受ける事ができない点は上述の通りです。更に、診療所に従事する時間が年間を通じて2分の1を超える場合には、その従業員は夫などの専従者となる資格がなくなります。従って、夫の所得の計算上、夫などが妻に支給した専従者給与は必要経費に算入する事ができなくなります。

 これは、税法上、専従者は年間最低でも2分の1以上夫などの事業に従事する事が条件になっているからです。

パート従業員雇用は最初が肝心

 このように、パート従業員は、その給与総額と夫の専従者該当非該当に応じて複雑に夫などの税額が変動します。

 従業員によっては、これらの夫の所得税負担を考えて年の途中で診療所勤務を辞める場合も多々生じる可能性があります。トラブルを生まないためにも、この知識を身につけ、十分パート従業員と合意の上雇用をする事が大切です。

 尚、年間給与総額が130万円「以上」となった場合には、その従業員は夫などの第三号被保険者とならず、新たに国民年金の掛金を支払う必要が生ずる場合がある事も注意しましょう。

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