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幸せを遺す知恵の“話(ワ)”②

経営に役立てる医院の会計と税務 税理士 三瀬 義男

 ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

【2016年2月】幸せを遺す知恵の“話(ワ)”②

相続税対策の武器はたくさんあったほうがいい

 突然ですが、もし、あなたが余命1カ月と宣告されたならどうしますか。開業医として個人で事業されている先生方は経営上の事業用財産はもちろん、プライベートの財産も相続税の課税対象になります。医療法人を経営されている先生方にとって、即時に売却できない出資金は納税猶予の選択をしない限り、多額の相続税が課税されます。しかし、先生方は多忙であり、相続税対策はつい、「まだ大丈夫だろう」と先送りしてしまうのが実情ではないでしょうか。家族のため、医院経営のため、地域医療のため、「その時の」備えを準備しておく。生前に相続のための武器を用意しておくことは次の世代への“やさしさ”だと思います。

 今その1つの武器が法人化の活用です。ここでいう法人化とは本業(医療業務)を法人化することではありません。個人のプライベートな財産を法人に移動させることです。その財産が不動産でも現金でも有価証券でもかまいません。皆様は直接的財産を保有するのではなく、間接的に株式という形で財産を管理・運営していくのです。

 法人化のメリットはズバリ!所得を分散できるということです。富を1人に集中すると高い累進税率が適用されます。法人・親族に適度に所得を分散することで相続税対策、所得税対策に効果を発揮します。さらに、相続人間のもめるリスクを軽減します。例えば、株を所有している人は実質的な財産の所有者であることから、生前に事業を守る人、家を守る方に株式を贈与すれば解決できます。

 第2のメリットは相続税評価を考える上で、株式評価の評価額を抑制でき、コントロールをすることができます。第1話で話をしたように、相続税対策の肝は同じ1億円の時価を財産の種類でコントロールすることで税負担を抑制することです。例えば現金1億円の相続税評価は1億円ですが、その現金を土地に変えれば8000万円、さらに、プライベート法人の株式であれば、一定の条件を加えることで限りなくゼロに近づけることが可能になります。

 個人財産の法人化は時代の変化に応じた相続税対策を柔軟に対応できる武器をもつことができます。今後、富裕層の方にとって、一家に1法人を持つことが普通の時代になってくるのではないでしょうか。

 次回は実際に行った法人活用の具体的な事例を紹介します。

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