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【2021年9月】令和4年1月施行の改定電子帳簿保存法/紙保存できなくなる電子取引

経営に役立てる医院の会計と税務税理士 西村 博史

 ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

【2021年9月】令和4年1月施行の改定電子帳簿保存法/紙保存できなくなる電子取引

 所得税法や法人税法では、請求書、領収書等(請求書等)の保存義務が定められています。電子帳簿保存法が改定され、令和4年1月から、メールに添付された請求書など一定の電子取引については、紙媒体(印刷物)での保存ができなくなり、電磁的記録で保存することが義務となります。 電子帳簿保存法では、電子取引以外にも、紙媒体請求書等のスキャナー保存や会計ソフトで作成した帳簿の電子保存方法についても改定されています。
 今回は、これらの内電子取引の改定部分について解説します。

紙媒体保存ができなくなる電子取引

 国税庁電子帳簿保存法一問一答では、
(1) 電子メールにより請求書や領収書等のデータ(PDFファイル等)を受領
(2) インターネットのホームページからダウンロードした請求書や領収書等のデータ(PDFファイル等)又はホームページ上に表示される請求書や領収書等の画面印刷(いわゆるハードコピー)を利用
(3) 電子請求書や電子領収書の授受に係るクラウドサービスを利用
(4) クレジットカードの利用明細データ、交通系ICカードによる支払データ、スマートフォンアプリによる決済データ等を活用したクラウドサービスを利用
(5) 特定の取引に係るEDI(電子的受発注)システムを利用
(6) ペーパレス化されたFAX機能を持つ複合機を利用
(7) 請求書や領収書等のデータをDVD等の記録媒体を介して受領
などが、電子取引に該当するとしています。
 これらの電子取引については、令和4年1月以降、次に述べるような電磁的記録方法により保存することとなります。

電子帳簿保存法の電磁的記録とは

 電磁的記録をするために、モニター等を備え付けパソコンやクラウドにデータを保存する他、次のいずれかの方法による保存が必要です。
①所定のタイムスタンプが付された後の電子記録を保存する
②原則、2か月と7営業日以内に受領者が所定のタイムスタンプを付して保存する
③データの訂正削除を行った場合にその記録が残るシステム又は訂正削除ができないシステムを利用して保存する
④訂正削除の防止に関する事務処理規程の備付けをし、取引の種類ごとに日付を付し、検索可能な状態でパソコン等に保存する。
 なお、税務職員による質問検査権に基づく電磁的記録のダウンロードの求めに応じる場合には、範囲指定及び項目を組み合わせて条件を設定できる機能の確保が不要となりました。
 小規模な医院の場合、実務的には、④の方法によることが現実的であると思われます。

罰則規定と消費税仕入税額控除

 上記の電子取引について、電磁的方法による保存が行われなかった場合、所得税法や法人税法では青色申告の取消が行われる可能性があります。一定の保存義務違反があったとしても、ただちに青色申告取消となることはないものの、税務当局の今後の実務上の対応に注意する必要があります。また、消費税法上では、引き続き、紙に出力した請求書等の保存をもって、仕入税額控除の適用を受けられることになっています。

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