奈良県保険医協会

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消費税の基礎知識

経営に役立てる医院の会計と税務 税理士 西村 博史

 ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

【2009年4月】消費税の基礎知識

 確定申告で消費税を納付した診療所は、比較的少ないと思われます。しかし、医薬材料費をはじめ経費は消費税込みで支払っています。医院の消費税について、基本となる知識を知ることにより、医業と消費税の関わりをより深く理解することができます。

診療報酬非課税のしくみ

 医院の診療報酬は、自費診療のみ消費税の課税対象です。保険診療は非課税であるため、患者から消費税を徴収する必要がありません。しかし、一般の諸経費のみならず、医薬材料費や外注検査費、医療用機材についてもほとんどが非課税ではありませんから、診療所はこれらの経費を消費税込みで支払う事により消費税を負担していることになります。一般の事業所では、収入に消費税を上乗せして徴収(これを転嫁と言います)し、支払った経費の消費税を差引して、その差額を国に納付します。転嫁した消費税は、経費支払時と国への納税時に精算され、理論上事業者は損得ゼロとなります。しかし、医院の場合、転嫁できないため、納税はゼロであっても経費分や設備投資分の消費税は負担する仕組みです。このような損税は、現行医業税制の大きな矛盾の一つです。

課税事業者となる場合

 自費などの課税売上が年間1000万円を超える場合には消費税を納税する義務が生じます。しかし、納税義務者となっても、経費や設備投資に関する消費税を100%控除することはできません。原則として、自費など課税売上と非課税報酬等を併せた報酬全額に自費等報酬が占める割合(課税売上割合)分だけしか経費などの消費税は控除できない仕組みです。

 但し、自費診療にのみ対応する検査外注費、医薬品、機器などは個別に自費対応分として経理することにより消費税の納税計算上100%控除することができます。納税義務者となったら、こうした区分経理を行う事で消費税の節税を励行することが必要です。

簡易課税制度の利用

 消費税は、収入時に受取った消費税と、経費など支払時に支払った消費税の差額を国に納税する仕組みです(実額課税)。課税売上が5000万以下の場合、実額課税に代えて簡易課税制度を選択することができます。これは医業などサービス業の場合、収入の50%の経費を消費税計算上自動的に認めてくれる制度で、実際の経費が比較的少ない場合については有利な制度です。簡易課税制度は、一旦選択したら2年間は継続を強制されますから、慎重に有利不利を判断してから選択することが大切です。

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