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教育資金贈与の非課税特例は慎重に

経営に役立てる医院の会計と税務 税理士 西村 博史

 ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

【2013年4月】教育資金贈与の非課税特例は慎重に

 平成25年3月に教育資金贈与の特例法案が国会で可決成立しました。高騰する教育資金に悩む保護者の立場から相続税対策としても注目される制度のようです。4月1日から開始された特例の内容と注意点について解説します。

教育資金管理契約を締結

  教育資金贈与の1500万円までの非課税特例(以下特例)は、直系尊属(親や祖父母など)から受贈者である子や孫に贈与した資金のうち、教育資金に使用された部分の金額は、1500万円までを非課税として贈与税を課税しないという制度です。

  具体的には、①直系尊属が、信託会社に金銭等を信託する、②直系尊属から贈与された金銭等を子や孫が銀行等に預け入れる、③直系尊属から贈与された金銭等で子や孫が証券会社等から有価証券を購入するケースが予定されています。

  いずれの場合にも、信託会社、銀行、証券会社等と教育資金管理契約を締結するとともに、教育資金非課税申告書を提出する必要があります。

  平成25年4月1日から平成27年12月31日までの間であれば、一括でも分割でも贈与が可能です。

対象となる教育資金とは

  委細は今後公開される省令等によります。現在文部科学省の公表する資料によると、①幼稚園、保育所、学校に対して支払う入学金、授業料、修学旅行費等は1500万まで非課税、②学用品費、修学旅行費などを学校でなく直接業者に支払う場合には学校が認めるものに限り非課税限度は500万円まで、③塾、スポーツ、文化芸術教養など指導対価や施設料は非課税限度500万まで、というものです。金融機関等に領収書などを提出するか請求書による振込をするなどの方法で引出が可能です。

未使用部分は贈与課税

  特例は、相続税の課税対象から除外される上、通常の年間110万円の贈与税非課税枠とは別枠とされます。良い事ばかりのように見えますが、教育資金以外に使用した場合や子や孫が30歳に達するまでに使い残した部分には贈与税が課税されます。また、非課税となるかどうか判断が難しい教育費も想定されますから、実施する場合には将来の教育費を想定し、未使用部分が生じないかどうか検討する事が必要です。

  何よりも、祖父母から孫へなど扶養義務者相互間での通常の教育費負担はそもそも贈与税が課税されません。

  この点を考えると、贈与者に相続が近い将来に発生することが予測され毎年贈与できず一括贈与が必要な場合、意思能力を喪失し贈与が不可能となる事が想定される場合などが最も有効な活用方法であると考えられます。

  いずれにせよ、今後詳細が決定されてから慎重に特例適用を検討される事をお勧めします。

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