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変わる減価償却制度

経営に役立てる医院の会計と税務 税理士 西村 博史

 ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

【2007年6月】変わる減価償却制度

 平成19年4月1日以後に取得した減価償却資産について、減価償却制度が改定されました。医業所得との関連では何を注意すべきか、減価償却制度の概要と共に解説をします。

減価償却は、先払税金を回収する制度

 税法上、1個30万円(白色申告書の場合には10万円)以上の備品や医療機器などの減価償却資産は、支払ったその年では一度に経費とならず、税法上定められた耐用年数にわたり徐々に経費化されます。つまり、減価償却資産の代金を支払ったものの経費計上が支払った年に一度でできないため、税金は後の年度で回収されるという事になります。

定額法と定率法どちらが有利か

表1
計算方法
定額法 取得価額(買値)×定額法償却率
定率法 年初未償却残額×定率法償却率

 この減価償却の計算方法には、定額法と定率法の2種類があります。個人の場合、特別な届出をしない限り、定額法を選定したものとされます。定額法は、毎年の減価償却額が同額となるように、元々の取得価額(買値)に一定の割合を乗じて計算する方法です。他方、定率法は、前年の減価償却後の金額に一定の率を乗じて計算する方法です。計算方法は表1を参照してください。どちらが有利かは、診療所の所得動向に左右されます。一般的には早い段階で大きな償却費を計上できる定率法が経費の先取りができ有利ですが、例えば開業直後で所得も少なく低い税率が適用される場合などは明らかに定額法が有利です。

残価1円まで償却可能に

 今回の減価償却制度の改定の目玉は、従来は取得価額の95%しか償却できず、残りの5%は償却できなかったものを残り1円までできるように改定した点です。この改定は、平成19年4月1日以後に取得した資産から適用されます。また、既に、95%を償却しきった資産については、平成20年度(20年3月申告)から5年間で均等に償却する事になります。

変わる償却率と償却制度

 1円償却制度により、定額法、定率法ともに償却率が改定されました。注目すべきは、特に耐用年数が短い資産について、初年度の償却額が大きくなった定率法です。例えば、耐用年数6年の車の場合、取得価額が200万円とすると、初年度の償却率は0.417で、12ヶ月分の償却金額は、83万4千円になります。定額法の償却率は0.167で33万4千円と比較すると大きな差となります。耐用年数が終了した時点での減価償却額の総額は定額法でも定率法でも同額ですが、早期に税額を取戻したい場合には定率法を検討すると良いでしょう。

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