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【2022年3月】令和4年度税制改正大綱③

経営に役立てる医院の会計と税務税理士法人あおば
三瀬 義男

 ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

医院経営のための賢い節税

 令和4年度税制改正大綱の特徴とは何か。岸田政権の言葉を借りれば、「成長と分配の好循環」を喚起するための税制といえます。税制改正大綱の基本的な考え方は、「成長と分配の好循環」と「コロナ後の新しい社会の開拓」をコンセプトに掲げ、新しい資本主義の実現に取り組むことを表明しています。そのためには、企業が行う研究開発と人的資本の投資が必要であると位置づけています。

賃上げ企業へ減税措置

 具体的には、賃上げを積極的に行う企業は、税制上の措置として抜本的な減税を実施する内容を盛り込まれました。
 もちろん、賃上げによる減税措置が、岸田首相の考える新しい資本主義に理論的に影響を与えるのか甚だ議論の余地は残ります。ただ、現場の経営において、影響のある改正案については、しっかりと押さえておく必要があります。

人材確保促進税制の改正案骨格

 まずは、企業の賃上げを促進させる目的として、人材確保促進税制(中小企業向け)の改正案の骨格について説明します。
 従業員に対して賃上げを行った中小企業、個人事業主は、給料増加額に対して最大40%の税額控除の特例を受けることができます。中小企業、個人には、当然、病院や個人クリニックを含みます。現行制度において、雇用給与者の給料増額に対する税額控除は存在します。今回は、それを大幅にリニューアルして、税額の控除額を現行25%から40%へアップし、さらに適用要件が緩和されます。具体的なキーポイントは3つです。

3つのポイントクリアで最大40%の税額控除

 一つは、雇用している従業員の給与総額が前年度増加率1.5%であること。まず、この条件をクリアすることで、一律15%の税額控除を受けることができます。
 次に、前年度増加率が2.5%以上になると、さらに15%の上乗せを追加することができます。
 3つめは、従業員に対して、職務に必要な技術又は知識を習得させ、又は向上させるために費用を支出した教育訓練費の見直しです。教育訓練費の前年度増加率が10%を上回る場合、控除率を10%加算することができます。この場合、前年度の教育給付訓練費がゼロでも適用することができます。
 以上の控除率を合算すると最大40%の控除率を適用することができます。例えば、年間全従業員の給与総額が前年度と比べて300万円(前年度増加率2.5%以上)のアップを実現し、教育訓練費として前年度比10%以上の支出があった場合、最大120万円を法人税から控除することができます。

特例活用で人的資本の整備

 病院経営の視点に立てば、安定的な医療の源泉は「人材」です。今後の経営戦略にとって、人材の確保・定着及び技能向上ための人的資本の整備は、必要不可欠な要素となります。その際にぜひとも、上記税制のメリットを活かして頂きたいと思います。
 適用時期は、令和4年4月1日から令和6年3月31までとなっています。令和4年から人材への投資を積極的に計画されている病院やクリニックは、この特例を賢く活用することお勧めします。

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