補助金・助成金の会計と税務〈上〉
税理士 西村 博史
ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。
【2020年8月】補助金・助成金の会計と税務〈上〉
従来は一部の利用に限られていた補助金・助成金が、コロナウイルス感染症により多くの医療機関が利用するところとなっています。医療機関での補助金助成金とその会計税務について2回に分けて解説します。
収入計上時期に注意
補助金も助成金も原則として返還の必要のない資金です。補助金は、申請に基づき審査や採択、交付決定があり、申請すれば支給されるとは限りません。他方、助成金や給付金、交付金は、一定の条件を充足すると原則支給されます。この違いが、補助金、助成金の会計税務に影響します。原則として、補助金は決定前には収入計上不要です。対して、経費を補填する助成金や給付金は、経費発生月での収入計上が原則です。例外もあるので、この点を間違えないようにすることが重要です。
所得税、法人税、消費税の取り扱いが異なる
補助金、助成金等は、いずれも消費税非課税となっています。しかし、所得税、法人税については、課税されるものと非課税のものが混在しています。この点も注意が必要です。
持続化給付金は所得税、法人税の課税の申告が必要
持続化「給付金」は、前年同月比の売上げが50%以上減少した一定の法人等、個人事業者に対し、事業全般に広く使える資金として、法人は最大200万円、個人事業者には最大100万円を給付するものであり、補助金とは異なり使途の確認等は行わない贈与契約となっています。申請期限は、令和3年1月15日です。
持続化給付金は、経費補填ではないため、決定通知が届いた日または入金があった日のいずれか早い日に収入計上します。消費税は非課税ですが、所得税法人税の課税対象となります。
雇用調整助成金は休業した月分の雑収入
雇用調整助成金は、最近1か月間の売上高または生産量などが前年同月比5%以上減少している医療機関が休業等を実施し休業手当を支払っている場合に、1人当たり日額最高1万5千円の支給が受けられるものです。申請期限は、対象期間の末日から2か月以内です。
持続化給付金同様、消費税は非課税、所得税や法人税は課税となっています。
ただし、経費となる給与を補填する制度ですので、休業月の属する事業年度に未収計上が必要です。年度末に決定通知が届いていない場合でも、見積により未収計上が必要ですので注意が必要です。
同様の制度として、小学校休業対応等助成金及び支援金があります。小学校の臨時休業等により休業した従業員等に支払った給与を補填する制度です。申請期限は12月28日です。会計処理や税制は、雇用調整助成金と同様です。
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