ある日突然訪れる「税務調査」~相続税編~③
税理士 三瀬 義男
ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。
【2020年3月】ある日突然訪れる「税務調査」
~相続税編~ ③
前回は、相続税対策における生前贈与の留意点についてお伝えしました。さて、いよいよ最終回は、相続税の税務調査の現場をお伝えします。実際の税務調査が「どのように行われるのか」「何が問題視されるのか」、そして「どのように切り抜けたらよいのか」、その具体策を説明しましょう。
はじめに、一本の電話から始まります。「〇月〇日に被相続人○○さんの相続税の税務調査をさせて頂きます」と。そして、当日は、朝10時ごろ玄関の呼び鈴が鳴り、ドアを開け、2人の調査官が立っているところから、戦闘開始です。
特に気が抜けないのは午前中のヒアリング調査です。主なヒアリング事項として10列挙しました。まず、①ご家族・親族の状況について(氏名・年齢・職業・年収・所有不動産の有無)説明を求められます。さらに、②亡くなった人の学歴、転居・不動産の売買について、③亡くなった人の趣味、生前の生活費について、④預貯金は誰がどのように管理していたのか、⑤銀行・証券会社などのお付き合いや担当者の自宅への訪問有無、⑥遠方の預金口座がある場合、口座開設の理由について、⑦死亡原因や病歴・入院時の本人の状況について、⑧入院中のお金の管理は誰が行っていたか、⑨生前贈与の有無、⑩特殊関係人の有無について、確認していきます。ポイントは世間話を織り交ぜながら、何気のない会話から相続財産の漏れにつながる情報を聞き出します。
例えば、亡くなる直前のお金の管理者を、調査官は知りたがります。その意図は、本人の意思によるものかどうかということです。闘病期間中に家族が本人名義の預金を引き出すことはよくあります。その引出しが、本人の意思により、使用していれば問題ありませんが、本人の意思そっちのけで家族が勝手に預金を移動していれば問題になります。
ここでは、紙面の都合上、細かな質問の意図の説明は省略しますが、どの質問にも共通していえる調査官の意図が2つあります。「収入と財産・預貯金のバランスが不自然ではないか?」「亡くなった人の財産が生前に相続人名義等に変わっていないか」ということです。
相手の意図をくみ取り、問題のない受け答えをするだけで、調査官の調査に対する意識は変わります。下手に隠し立てする必要はありません。事前通知の電話があってから税務調査が行われる日までの間、落ち着かない毎日を過ごすかもしれません。「いったい、何を聞かれるのだろうか」「どんな書類を見に来ているのか」「うまく答えられなかったらどうしよう」と不安になります。その時は、今日の話を思い出してください。“彼を知り己を知れば百戦殆からず”です。事前に税務署の対応を知ることができれば、冷静な判断を行うことができます。今回は、そのヒントにつながればと思います。
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