改正される年金の税制と会計
税理士 西村 博史
ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。
【2019年9月】改正される年金の税制と会計
公的年金制度が改正され、令和2年から公的年金等控除額が変更となります。また、年金制度への信頼が揺らぐ中、年金に対する税務相談が増加しています。今回は年金制度の概要と税制について説明します。
1 公的年金等控除額の上限額
令和元年までは、公的年金等控除額は所得に応じて上限なく適用されていましたが令和2年からは上限が設けられます。医業所得や年金所得などの所得の合計額に応じて下表のとおりの控除額となります。主な改正点は2点です。
①公的年金等控除額は、最高195万5千円とされた。
②給与所得と年金所得の両方がある場合、10万円を限度として給与所得の減額が行われる。
公的年金等 収入 | 改正前 | 令和2年以降 | ||
---|---|---|---|---|
公的年金等以外の所得の金額 | ||||
1000万以下 | 1000万超 2000万以下 | 2000万超 | ||
330万未満 | 120万 | 110万 | 100万 | 90万 |
330万以上 410万未満 | 25%+37.5万 | 25%+27.5万 | 25%+17.5万 | 25%+7.5万 |
410万以上 770万未満 | 15%+37.5万 | 15%+68.5万 | 15%+58.5万 | 15%+48.5万 |
770万以上 1000万以下 | 5%+155.5万 | 5%+145.5万 | 5%+135.5万 | 5%+125.5万 |
1000万超 | 5%+155.5万 | 195.5万 (上限) | 185.5万 (上限) | 175.5万 (上限) |
令和2年以降計算例
年金400万円で所得1000万以下の場合→400万×25%+27.5万=127.5万円が控除額
2 公的年金制度と私的年金制度
厚生年金、国民年金、障害年金などを総称して公的年金と言います。税制上は、公的年金等控除があるものとないものの区分が重要です。
国民年金基金、小規模企業共済制度による年金なども、税制上は公的年金とされ、公的年金等控除の適用が受けられます。
保険医年金や生命保険契約等による年金などは、私的年金とされ、公的年金等控除の対象とはなりません。ただし、保険医年金などは、掛け金と年金との差額(差益)が課税対象となるのに対し、公的年金から掛け金は控除されません。
公的年金=公的年金収入-公的年金等控除額
私的年金=私的年金収入-私的年金の掛け金対応額
3 公的年金等の支給停止制度
公的年金は、主として相互扶助による生活保障が目的とされています。給与収入月額相当額(総報酬月額相当額)と厚生年金収入のうちいわゆる報酬比例部分の金額の月額(基本月額)合計額が一定額を超える場合、年金収入が支給停止されます。支給停止された年金は、将来受給することもできません。例えば、65歳以降の場合、給与の総報酬月額相当額と年金の基本月額の合計額が47万円を超える場合には、年金の一部または全部が支給停止となる場合があります。医療法人勤務の場合や、産業医等の給与がある場合には要注意です。
4 検討すべき点は次の通りです。
①給与所得がある場合、厚生年金の報酬比例部分の年金に支給停止がある
②公的年金等控除額の対象となる年金の年額と年間の所得合計金額に応じて公的年金等控除額の上限がある
③一時金と年金を選択できる小規模企業共済等の年金については、ライフスタイルと将来所得を見越してどちらが有利か計算する必要がある
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