奈良県保険医協会

メニュー

2019年税制改正大綱を読み解く(2) 

経営に役立てる医院の会計と税務 税理士 三瀬 義男

 ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

【2019年2月】2019年税制改正大綱を読み解く(2) 

民法改正で「相続」の何が、どう変わる?~その時、必要な相続税対策とは!?~

 第1回目は平成31年税制改正大綱の相続税に関する事項を中心に解説しました。第2回目は相続法の改正にあたり、相続税対策として留意すべき事項をお話します。民法の相続分野は約40年ぶりに大きく改正され、平成30年7月13日に公布されました。主な改正の内容は、残された配偶者の居住権を中心とする保護の拡充、遺産分割制度や遺言制度に関する見直し、相続人以外の貢献の評価、遺留分制度の見直しなど、改正の内容は多岐にわたります。今回は、その中から本年中に施行される自筆証書遺言の見直しの内容についてお伝えします。

 現行の自筆証書遺言は、遺言者自ら、その全文、日付及び氏名を自書し、これに印を押さなければならないと規定されています。この全文を自書することは、高齢の遺言者にとって、大変な負担であり、困難を要する作業でした。今回の新法では、その全文自書の内、財産目録については、自書が不要となりました。自書が不要ということは、例えば、該当する財産が不動産や預金の場合、不動産登記簿謄本の写しや、通帳の写しを添付することで、省略することができます。ポイントは、「誰にどの財産を渡すのか」ということを自書できれば、遺言書の法的効果を実現することができます。この改正の施行日は平成31年1月13日とすでに開始されています。

 さらに、この自筆証書遺言の保管制度も創設されています。これにより、自筆証書遺言の最大のリスクである、作成後の紛失や隠匿や変造される事を回避することができます。保管方法は、公的機関として法務局に保管され、遺言者の死後、相続人の請求により交付されることになりました。この保管制度は2020年7月13日までに整備され、施行される予定です。

 以上の改正により、遺言書を作成される方が今以上に増加すると予想されます。そこで、自筆証書遺言、公正証書遺言を問わず、遺言書を作成する上において、税務上、留意すべき事項について触れておきます。具体的には、誰がどのような財産を取得するかによって、相続税の特例を適用できる人とできない人が出てくるということです。相続税の特例として、「配偶者の税額軽減制度」や「小規模宅地等の課税価格の特例」、「障害者・未成年者控除」制度があります。

 例えば、「小規模宅地等の課税価格の特例」の取扱いについて取り上げます。遺言書の中で、自宅の宅地を被相続人と同居している相続人がいるのに、同居していない相続人に“自宅を相続させる”遺言を書いたとします。この場合、自宅の宅地は80%評価減額の特例を適用することができず、相続税の負担増加につながります。

 以上、遺言書と「相続税の特例」は非常に密接な関係を有します。ぜひ、皆さんが遺言書を作成する場合、民法の法務的な視点と相続税の税務的な視点をもって、作成することをお勧めします。

経営に役立てる医院の会計と税務

さらに過去の記事を表示