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2019年税制改正大綱を読み解く(1)

経営に役立てる医院の会計と税務 税理士 三瀬 義男

 ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

【2019年1月】2019年税制改正大綱を読み解く(1)

~相続税関連を中心に

 今年も始まります。本年1月から“ちょっと得する相続”のお話を3回シリーズに分けて連載します。今年のシリーズのテーマは「ザ!改正」です。

2019年からさまざまな改正が相続分野において予定されています。民法の相続法については36年ぶりに大幅に改正され、本年から順次施行されます。さらに、先月12月18日には2019年度の税制改正大綱が発表されました。第1回目は相続税を中心とした税制改正大綱の内容についてお伝えします。

 まず、注目すべき相続関連税制は昨年に引き続き、富裕層に対する課税強化策が多く盛り込まれています。税制の方向性は個人が保有する資産の強化へより一層進むと想定されます。

 具体的には贈与税非課税枠と相続税の土地減額特例条件が厳しくなります。贈与税非課税とは、教育資金・結婚・出産・育児の一括贈与制度です。例えば、教育資金贈与は子や孫(29歳以下)に教育資金を一括して贈与する場合、一人当たり1500万円まで非課税になります。まとまった金額を一度に非課税で贈与できる利点として、相続税対策に活用されてきました。しかし、今回の改正では贈与の期限を21年3月末へと2年延ばす一方、新たに所得制限、教育資金の用途、年齢制限を設けました。特に今後は23~29歳に相続直前の一括贈与の非課税適用を受ける場合は注意が必要となります。

 土地の減額特例条件の強化とは「小規模事業用宅地の評価減の特例」です。小規模事業用宅地の特例とは、親から子へ事業を引継ぐことを条件に、その事業用の土地を80%減額する特例です。その適用については、相続直前3年の間に事業用とした土地は原則として対象外としました。これは、節税目的で相続直前に家業を引き継ぐ例が目立ったことによる改正です。

 一方、減税事項の改正項目についても触れておきます。減税は消費税増税に対する緩和措置と事業承継に関する事項です。消費税率10%への引上げ後の景気悪化を防ぐため、住宅資金の贈与については、大幅な非課税枠が設けられています。2019年10月から2020年3月31日中に子や孫へ住宅購入資金として贈与をした場合、最大3000万円まで非課税枠があります。ぜひ、活用をお勧めしたいところです。事業承継は、今年の改正より個人事業者の事業用資産に係る納税猶予制度が創設されました。猶予対象は事業用の土地、建物、減価償却資産です。個人診療所の事業者は、今後の動向についてぜひ注目すべき改正となります。

 減税措置はあくまでも期限付きであり一時的です。冒頭にも書いた通り、今後も富裕層に対する課税強化は続くと考えて間違いありません。その事を含めて、より良い対策を検討する必要があります。

 次回は相続法改正により相続税に与える影響についてお話します。

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