相続税の世界を体感せよ!~ガラパゴス化!?する日本の相続税~①
税理士 三瀬 義男
ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。
【2018年1月】相続税の世界を体感せよ!~ガラパゴス化!?する日本の相続税~ ①
2018年度税制改正大綱は今後の税制を大きく左右します。マスコミ等の一般的な報道では、さまざまな働き方の多様化に合わせた、所得税改革を実行したと建前上説明されています。しかし、本音は、富裕層に対する課税強化です。さらに言えば、個人所得税の増税を軸とした相続税強化に他なりません。その流れは、世界的な視点からみると逆行しています。
現在、相続税を課税している国は、タックスヘイブンの国々を除いて半分しかありません。アジア・オセアニア地区では、韓国、フィリピン、台湾、タイを除いて、香港、シンガポール、マレーシア、豪州、ニュージーランド等においては、相続税の課税がありません。また、最近では、米国において、遺産税廃止の動きがあります。
では、なぜ、世界各国では、相続税のない国が半数もある中、日本は相続税の強化を図るのか。その一つの解として、日本の財政事情として消費税の増税が挙げられます。消費税増税は「税の逆進性」を進行させます。つまり、低所得者層はより一層の税負担が発生します。政府は「消費税負担を所得の低い層に押し付け富裕層を優遇する」という批判をかわすために、富裕層に対する相続税強化を図る意図が見え隠れします。
さらに、日本を中心としたアジア地域に視点を移します。日本から周辺諸国を見わたすと、日本は贈与税・相続税のない国に囲まれています。専門家の間では、この日本だけが突出して高率の相続税を課税している現象を「日本の相続税のガラパゴス化」と指摘します。
このガラパゴス化の傾向は、ますます強くなっています。その証拠に日本は世界の流れに反して、相続税を強化する政策を次々に打ち出しています。平成27年より相続税の基礎控除引下げを一つのキッカケとして、国内財産調書、国外財産調書、国外転出時課税制度と富裕層の囲い込みと増税を図っています。童話の「北風と太陽」に例えるなら、日本の相続税は、「北風」政策を実施、継続しているということです。
この流れは、今後も継続されると思われます。特に今回の税制改正において、「個人に厳しく法人にやさしい」税体系はますます進行すると思われます。逆説的に考えれば、今後の着目は法人化です。個人の財産を法人に取り込むことで、法人の中で財産形成を図ります。法人化は、相続税・贈与税の課税を軽減できる一つの受け皿となるはずです。
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