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家族の・家族による・家族のための民事信託1

経営に役立てる医院の会計と税務 税理士 三瀬 義男

 ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

【2017年1月】家族の・家族による・家族のための民事信託1

 今、「相続対策」についての相談が年々、増えています。相談内容は単なる税金の問題だけでなく、いかにスムーズに資産を次の世代に引き継ぐかという「相続承継」の問題です。従来の民法の規定では、高齢家族の財産保護や相続対策に制限が加えられていましたが、2006年の信託法の改正によって、幅広く柔軟に応用できるようになりました。そこで、今回は、信託を活用した相続(税)対策の内容を3回シリーズに分けて紹介します。

 まず、信託って何!?と思っている方が多いと思います。信託とは、「信じて託すこと」といわれます。しかし、これだけでは意味がよく分からないですよね。

 実は、信託は日常誰でも行っており、特別なことではありません。もっと簡単に言えば、「人にものを頼んで何かをやってもらうこと」です。例えば、私が正月のお年玉を親戚の子供に渡すために、両親にお年玉を預け、子供へ渡してもらう、といったことも立派な信託行為です。

 信託行為には、必ず登場人物が3人でてきます。頼む人(委託者)、頼まれる人(受託者)、利益を受ける人(受益者)です。先の事例で言えば、私が「委託者」で、両親が「受託者」、子供が「受益者」となります。

 では、どのような場合に活用するのか。様々な活用事例がありますが、もっとも代表的なプランをご紹介します。一つは「高齢の方の認知症対策」です。認知症などになってしまうと、本人の意思能力がないという事で一切の法律行為(例えば、売買・贈与契約など)ができなくなります。しかし、信託による信託契約があれば、財産管理や家族のための支出、相続税対策が柔軟に行うことがでます。

 例えば、図解のように、父親の財産を長男に委託、長男は父親から預かった財産を受託し、父親の財産から得られる賃料等は父親が受取る信託を契約します。この場合、財産の所有権は父親から長男に移転され、長男は財産管理を行うことができます。その後、親の意思能力がなくなった場合でも成年後見人をつけることなく、生活援助や資産の買換え、相続税対策などが実行できます。また、税務上は父親が受益者であるため、信託に伴う所得税、贈与税、消費税は発生しません。

 これ以外にも、信託を活用することで、不動産を移転する際の不動産取得税等の免除規定を適用しながら、不動産の共有問題の解決につなげることも可能になります。

活用事例

 次回は、より信託の法律的な中身について詳細にお話します。

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