いますぐ実践!財産の棚卸し③
税理士 三瀬 義男
ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。
【2015年6月】いますぐ実践! 財産の棚卸し③
開業医のための相続・事業承継のお話はいよいよ、最終回となります。医業の相続・事業承継は他の相続と比べて特殊です。医業は、建前として利益を追求しない法人・事業であるからです。その特殊性であるからこそ、事前の準備が特に必要になってきます。「ウチは家族円満だから大丈夫」「法律で決められたとおりに手続きを行う」と思っていても、相続が「争族」を生んでしまうケースは山ほどあります。準備不足のまま迎え、争いに発展すると、家族間の亀裂や心理的なダメージ、最悪の場合は医業の廃止につながりかねません。こうした事態を回避するために、3回目のテーマは円満な相続を叶えるための7つのミッションをご紹介します。
- 財産の棚卸しと相続税の試算…先生方の個人としての財産及び医業としての財産をすべて洗い出し、どこにどんな財産があるのかを整理する。そして、現時点の相続税額を試算し、税額の目安を知ること。
- キャッシュリッチを避ける…節税効果のない余剰資金(現預金)は節税効果の高い不動産、MS(メディカルサービス法人)株式、保険等へ財産の種類を分散化する。
- 医療法人の持分評価を下げる…次の後継者を検討した上で、医療法人の持分評価を算定し、評価引下げ策を講じる。高額な出資持分額が算定される場合については相続税・贈与税の納税猶予等の特例措置の適用可能性について検討する。
- 計画的な贈与…財産をなるべく有利な税率で、後継者等に生前贈与を実行する。その際、しっかりと贈与契約書等の証拠書類を整えておくこと。
- 納税資金の確保…相続税の納税は現金一括納付です。相続人の全員が無理なく納税できる資金を準備しておくこと。
- 相続人全員が納得する遺産分割…生前から後継者を中心として相続人間の不満や不公平が残らないように、話し合いの場をもつ。
- 遺言書の活用…最後の意思を伝える手段及び法的な強制力を担保することで、医業のスムーズな承継を確保する。その際、相続人によって相続する財産に差がある場合は遺留分を侵害しないように気をつける。
この7つのミッションをクリアするとき、開業医の相続は“税金面における負担の減少”と“スムーズな医業の承継”が実現するものと信じています。次世代へ繋ぐ医業は皆様の想いや意志により、相(スガタ)に変え、続いていく。それが相続であると願います。
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