奈良県保険医協会

メニュー

いますぐ実践!財産の棚卸し②

経営に役立てる医院の会計と税務 税理士 三瀬 義男

 ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

【2015年5月】いますぐ実践! 財産の棚卸し②

▽え! 私のクリニックの出資持分ってこんなに高額になるの?! 1,000万円で設立した医療法人の出資持分額は100倍の10億円になっている!

出資持分の問題点

 相続税の試算を行った時、開業医の方に共通したリアクションです。開業の歴史が長く、業績の好調な開業医であれば、出資持分が100倍になることは珍しくありません。逆に、近年業績が下降気味だから、特に心配する必要はないと思っていた医院長先生も、実際の相続税評価は予想に反して高額になるケースがあります。これは出資金に対する配当が禁止されており、過去からの利益の蓄積が多額に計上されているためです。よって、どちらの場合であっても相続時においては、多額の納税負担が予想されます。

出資持分の納税額

 上記の例で後継者の相続税負担額は4億6,400万円に上ります。もし、この医療法人の持分評価を半分の5億円に評価減できたらどうでしょうか? この場合、相続税負担額は1億9,000万円に下がります。生前対策をしない場合と比べて約2億7,000万円の差額が発生します。“持分の評価をそもそも半分にすることは可能か”と半信半疑の方もいるかと思います。キーポイントは承継するタイミング(計画)を決めて利益と規模を調整することです。このタイミングとは後継者へ出資持分を贈与する時期を意味します。

生前贈与の活用

 出資持分を贈与する方法には大きく分けて二通りあります。一つ目は承継計画のもと、毎年贈与を実行することです。例えば、引退時期を10年後と考えるのであれば、暦年贈与を着実に実行することをおススメします。必ずしも、110万円の非課税枠にこだわる必要はありません。仮に贈与しないまま相続が起こった場合の相続税率50%と毎年の実質贈与税率30%であれば、暦年贈与を選択した方が有利になります。

 二つ目の方法は「相続時精算課税制度」を活用する方法です。この制度は60歳以上の親また祖父母から20歳以上の子や孫へ贈与する場合、2,500万円まで非課税になります。2,500万円を超えた時点において、一律20%の贈与税が課税されます。相続時に精算する制度であるため、相続時点において、贈与した価額で贈与した財産を相続財産に加算して、相続税を計算します。相続時精算課税制度の活用は、特に業績が常時好調を維持している法人にとって、より有効的な効果を期待できます。

 開業医の皆さん、確認しましょう! 現在の出資持分額を。

経営に役立てる医院の会計と税務

さらに過去の記事を表示