奈良県保険医協会

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増税後の消費税の損税問題を考える

経営に役立てる医院の会計と税務 税理士 西村 博史

 ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

【2014年8月】増税後の消費税の損税問題を考える

 医院の保険診療収入は「非課税」であるため、本来還付されるべき消費税が還付されません。今回は、増税前後の損税を実例により試算してみました。

損税とは

 消費税は、原則としてすべての取引に課税されます。しかし、社会保険診療報酬は「非課税」とされ、消費税は課税されません。しかし、医院が支出する仕入や経費にかかる消費税は医院負担となり、還付を受けることができません。この控除を受ける事ができない仕入経費等にかかる消費税が損税となります。

免税業者である歯科の場合

 A歯科は、免税事業者で消費税納税義務がありません。

 社会保険診療報酬3000万円があり、別途530万円の自費や雑収入について消費税5%当時26万5000円を収入していました。仕入外注費経費などにかかる消費税は67万5000円負担しています。差引41万円の消費税還付を受けるべきです。

 これが現行の消費税法では還付されず損税となっています。

 税率8%で65万6000円、10%で82万円と損税が増加することになります。

課税業者である医科の場合

 B内科は、課税売上が1000万を超えている課税事業者です。社保収入9000万円。1550万円の自費等収入について消費税5%当時77万5000円の消費税を収入していました。仕入経費などの消費税は130万円ですから、本来52万5000円の消費税還付があるべきです。

 ところが、現行税制では、非課税売上対応分の仕入等消費税は差し引できません。そこで、58万5000円の納税となります。還付されるべきところ納税となりますから、111万円の損税が発生しています。

 税率8%で177万5000円、10%で221万9000円と損税が増加することになります。この場合、簡易課税を適用すると納税額は減少しますが、損税を生む構造が問題です。

診療報酬改定で損税はどうなるか

 診療報酬改定は、この損税対策であるとのことです。しかし過去の例を挙げるまでもなく、報酬体系の変化とともに損税部分は計算すら不可能な状態です。

 社保収入について、非課税でなくゼロ税率適用となれば損税問題は一応解消します。しかし、本来福祉財源となるべき消費税は弱いものに負担が大きい逆進税制です。消費税の根本をただす改革こそ必要です。

免税業者 A歯科
本体価格 消費税額
5% 8% 10%
保険収入 30,000
自費収入 5,000 250 400 500
その他収入 300 15 24 30
収入合計 35,300 265 424 530
材料外注費 4,500 225 360 450
他課税経費 9,000 450 720 900
人件費 12,000
他非課税経費 900
経費合計 26,400 675 1,080 1,350
差引損税 -410 -656 -820

(単位千円)

課税業者B内科
本体価格 消費税額
5% 8% 10%
保険収入 90,000
自費収入 15,000 750 1,200 1,500
その他収入 500 25 40 50
収入合計 105,500 775 1,240 1,550
医薬材料費 11,000 500 800 1,000
他課税経費 15,000 50 80 100
人件費 30,000
他非課税経費 5,500
経費合計 61,500 1,300 2,080 2,600
差引損税 -525 -840 -1,050
仕入税額 190 305 381
差引納税 585 935 1,169
損税+納税 -1,110 -1,775 -2,219

(単位千円)

経営に役立てる医院の会計と税務

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