新設された所得拡大促進税制と改定雇用促進税制
税理士 西村 博史
ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。
【2013年6月】新設された所得拡大促進税制と改定雇用促進税制
平成25年度税制改定により、所得拡大税制が新設されました。同時に、従来の雇用促進税制が改定され税額控除額が40万円に増額されました。医業をめぐる環境は厳しさを増すばかりですが、雇用を増やし積極的な経営を図ろうとする医院にとっては是非活用したい制度です。
所得拡大促進税制とは
青色申告者である事業者が従業員(親族や役員を除きます)雇用について次の3つの条件を満たした場合、給与等支給増加額について、10%の税額控除が適用されるという制度です。
- 基準事業年度(個人は平成25年)の給与等支給額に対して、5%以上給与等が増加する事
- その年の給与等支給額が前年の給与等支給額を下回らない事
- その年の1人当たり給与等支給額が前年の1人当たり支給額を下回らない事
給与等増加額が200万円とすれば、10%分の20万円の税額が軽減されます。この規定の適用は、平成26年分の確定申告から適用されます。平成25年の給与等に比して平成26年の給与等が増額する場合には必ず適用を忘れないようにします。
特に事前の届け出等は不要ですが、次に説明する雇用促進税制と重複して受ける事はできません。
雇用促進税制とは
青色申告者である事業者が雇用者1人を増やすごとに40万円の税額控除を受ける事ができる制度です。
- 適用を受ける年とその前年に事業主都合の離職者がいないこと
- 雇用保険の対象となる従業員を2人以上かつ前年人数比10%以上増加すること
- 適用を受ける年の給与等が「前年の給与等×雇用増加割合×30%」以上の金額であること
- 適用年度開始後2カ月以内にハローワークに雇用促進計画を提出し、かつ適用年度終了後の申告期限(個人は3月15日)までに雇用達成状況の確認を受ける事
規定の違いを理解して活用を
上記のように、雇用促進税制は、個人の場合その年の2月末日までにハローワークでの手続きが必要ですが、新設された所得拡大促進税制は事前手続きを必要としません。
雇用促進税制は、人数により控除額が定額ですが、所得拡大促進税制は給与の増加額により控除額が異なります。
但しいずれの規定も、その年の所得税額の20%を上限とし、また平成26年から3年間の時限措置となっています。
人材格差が企業格差となる時代と言われます。医院の特徴を明確にした人材戦略を立案する上でも2つの規定の違いを理解して活用すると良いでしょう。
経営に役立てる医院の会計と税務
- 2022年12月26日【2022年12月】これからできる節税チェックポイント
- 2022年11月15日【2022年11月】続・令和5年3月末期限のインボイス発行事業者登録申請
- 2022年11月1日【2022年10月】令和5年3月末期限のインボイス発行事業者登録申請
- 2022年5月10日【2022年3月】令和4年度税制改正大綱③
- 2022年2月24日【2022年2月】令和4年度税制改正大綱②
- 2022年2月23日【2022年1月】令和4年度税制改正大綱①
- 2021年12月15日【2021年11月】令和3年分確定申告で注意すべきコロナ特例等
- 2021年10月14日【2021年10月】これからできる節税チェックポイント
- 【2021年9月】令和4年1月施行の改定電子帳簿保存法/紙保存できなくなる電子取引
- 【2021年8月】再考 専従者給与
- 2021年3月1日税理士の相続事件簿3 ~本当は怖い暦年贈与~
- 2021年2月1日税理士の相続事件簿2 ~物納戦略のススメ~
- 2021年1月1日税理士の相続事件簿1 ~とある経営者の悲惨な相続~
- 2020年10月1日今年の年末調整は改定が盛りだくさん 年収850万円を超える給与は増税に
- 2020年9月1日補助金・助成金の会計と税務〈下〉
- 2020年8月1日補助金・助成金の会計と税務〈上〉
- 2020年3月1日ある日突然訪れる「税務調査」~相続税編~③
- 2020年2月1日ある日突然訪れる「税務調査」~相続税編~②
- 2020年1月1日ある日突然訪れる「税務調査」~相続税編~①
- 2019年10月1日消費税改定と医業経営
- 2019年9月1日改正される年金の税制と会計
- 2019年3月1日2019年税制改正大綱を読み解く(3)
- 2019年2月1日2019年税制改正大綱を読み解く(2)
- 2019年1月1日2019年税制改正大綱を読み解く(1)
- 2018年11月1日医業でも可能な中小企業等経営強化税制の活用
- 2018年10月1日これからできる節税チェックポイント
- 2018年9月1日災害で税の減免を受ける
- 2018年3月1日相続税の世界を体感せよ!~医療法人の出資持分の承継方法~③
- 2018年2月1日相続税の世界を体感せよ!~小規模宅地の特例って…ナニ?~②
- 2018年1月1日相続税の世界を体感せよ!~ガラパゴス化!?する日本の相続税~①
- 2017年10月1日年末までの節税チェックポイント
- 2017年9月1日相続した空き家をどうしたら良いか―空き家の税務―
- 2017年8月1日配偶者控除が大幅改定どうなるパート社員の給与
- 2017年3月1日家族の・家族による・家族のための民事信託3
- 2017年2月1日家族の・家族による・家族のための民事信託2
- 2017年1月1日家族の・家族による・家族のための民事信託1
- 2016年11月1日所得拡大促進税制と決算対策
- 2016年10月1日今からできる年末までの相続対策
- 2016年9月1日マイナンバーこれからどうするか?
- 2016年3月1日幸せを遺す知恵の“話(ワ)”③
- 2016年2月1日幸せを遺す知恵の“話(ワ)”②
- 2016年1月1日幸せを遺す知恵の“話(ワ)”①
- 2015年11月1日決算対策8つのポイント
- 2015年10月1日改正されたふるさと納税制度
- 2015年6月1日いますぐ実践!財産の棚卸し③
- 2015年5月1日いますぐ実践!財産の棚卸し②
- 2015年4月1日いますぐ実践!財産の棚卸し①
- 2015年2月1日医業にも適用される投資促進税制
- 2014年12月1日償却資産税の再確認を
- 2014年8月1日増税後の消費税の損税問題を考える
- 2014年6月1日医業でも適用される所得拡大促進税制
- 2014年4月1日災害時の税務
- 2013年12月1日消費税増税に備える診療所の対策
- 2013年8月1日9月30日せまる消費税経過措置の期限
- 2013年6月1日新設された所得拡大促進税制と改定雇用促進税制
- 2013年4月1日教育資金贈与の非課税特例は慎重に
- 2013年2月1日平成25年分より適用される所得税の改正事項
- 2012年12月1日国税通則法「改正」で税務調査の何が変わるか-25年1月からの税務調査に備える
- 2012年10月1日税制改正と決算
- 2012年8月1日調査関連通達案公表で税務調査の何が変わるか
- 2012年6月1日マイナンバー法案の危険性
- 2012年4月1日確定申告後の注意点
- 2012年2月1日改正税法、今年度確定申告はこの点に留意を
- 2011年12月1日国税通則法「改正」で変貌する税務調査と医業税制
- 2011年10月1日注意したい決算事項
- 2011年8月1日平成23年度税制改定
- 2011年6月1日義援金と新寄付金控除税制
- 2011年2月1日扶養控除の改定
- 2010年12月1日共通番号制の危険なねらい
- 2010年10月1日決算の準備と対策
- 2010年8月1日平成22年度税制改定
- 2010年6月1日小規模企業共済制度の改正
- 2010年4月1日現物給与の会計と税務
- 2010年2月1日増改築と住宅税制
- 2009年12月1日お役立ち確定申告情報
- 2009年10月1日法人成りの税務会計
- 2009年8月1日税額控除を有利に利用する
- 2009年6月1日平成21年度税制改正
- 2009年4月1日消費税の基礎知識
- 2009年2月1日税引後所得を理解する
- 2008年12月1日年末調整と従業員給与の取扱
- 2008年10月1日相続税の大改正と生前贈与の税務
- 2008年8月1日MS法人との会計税務
- 2008年6月1日変わるリース会計と税務
- 2008年4月1日還付申告の税務と会計
- 2008年2月1日診療所賃借の会計と税務
- 2007年12月1日平成19年分決算の重要事項
- 2007年10月1日予定納税の会計と税務
- 2007年9月1日扶養親族の税務
- 2007年8月1日固定資産税の税務
- 2007年7月1日従業員の住民税と税務調査
- 2007年6月1日変わる減価償却制度
- 2007年5月1日ゴルフ会員権の会計と税務
- 2007年4月1日損害保険の税務
- 2007年3月1日確定申告と住民税
- 2007年2月1日税務調査(2)
- 2006年12月1日税務調査(1)
- 2006年11月1日平成18年分決算の重要事項
- 2006年9月1日親族間経費の税務と会計
- 2006年8月1日損害賠償金の税務と会計
- 2006年7月1日平成18年度税制改正を解説
- 2006年5月1日MS法人などに新たな課税-新設された特定支配同族会社課税制度
- 2006年4月1日確定申告後の年間納税額と資金計画
- 2006年3月1日税務調査と会計ソフト
- 2006年2月1日本年確定申告の注意点
- 2006年1月1日新規消費税課税業者の注意点
- 2005年12月1日パート従業員の雇用と税務
- 2005年10月1日医業税制の焦点と課題〈その4〉措置法26条
- 2005年9月1日医業税制の焦点と課題〈その3〉岐路に立つ事業税非課税制度
- 2005年8月1日医業税制の焦点と課題〈その2〉消費税(後編)
- 2005年7月1日医業税制の焦点と課題〈その1〉消費税(前編)
- 2005年6月1日家事関連費の会計と税務
- 2005年5月1日「人材投資促進税制」続報を解説
- 2005年4月1日17年度新税制「人材投資促進税制」とは
- 2005年3月1日専従者給与の活用と注意点
- 2005年2月1日本年確定申告の注意点
さらに過去の記事を表示