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扶養控除の改定

経営に役立てる医院の会計と税務 税理士 西村 博史

 ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

【2011年2月】扶養控除の改定

 平成23年から扶養控除の一部が改定されます。これにより給与から天引きする源泉徴収税額も変わることになります。今回は来年度税制改定も含め扶養控除の制度を考えます。

年少扶養控除などは廃止

 年齢16歳未満の扶養親族は平成23年分から扶養控除の対象となりません。これは、平成22年から実施された子ども手当(現在1万3千円支給)により不足する財源を補充するためです。
  また16歳から23歳までの特定扶養親族の内、年齢16歳から19歳までは除外されました。従来63万円の控除を受けることができましたが、平成23年より縮減され通常の扶養控除38万円のみとなります。
  高校授業料の実質無償化の財源として縮減されたものですが、もともと授業料が免除されていた年収300万円程度の世帯が扶養控除削減により実質増税となるなどの矛盾を抱えています。民主党のマニフェストでは特定扶養親族は維持するとしていた制度でした。
  さらに同居の特別障害者については、35万円相当額が扶養控除に上乗せされていましたが、今回扶養控除が削減されることに伴い障害者控除の増額として同額を上乗せすることになっています。

成年扶養控除の廃止案

 民主党政権の税制改定案は、①年齢23歳以上70歳未満の成年扶養親族に対しては、原則として扶養控除は廃止する②例外的に一定の障害者や要介護者などを特定成年扶養親族として扶養控除を認める③合計所得金額400万円以下(給与の場合には568万円以下)の所得者が成年扶養親族を有する場合には扶養控除を認め、合計所得金額500万円未満までは一部適用ありというものです。
  今回の法案では配偶者控除は削減の対象外となりましたが、年少扶養控除などと異なり削減を補てんする他の制度がない全くの増税案です。「本来成年は独立して生計を立てるべき存在である」というのが廃止の理由との事ですが、所得や就業機会のない成年を控除対象外とする制度は大きな問題です。

所得控除から税額控除へ

 扶養控除の廃止は、民主党の掲げる「所得(扶養)控除から税額控除・給付付き税額控除・手当へ」の改革に従ったものです。また、この改革の行く手には消費税増税と共通番号制がセットで用意されています。扶養控除を廃止し、手当や税額控除などで消費税増税の痛みを多少緩和できたとしても、株式譲渡益の分離課税などに代表される特定の所得や階層を優遇する制度の見直しを行わないままでは、応能負担を旨とする憲法の予定する税制には程遠いのではないでしょうか。

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