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MS法人との会計税務

経営に役立てる医院の会計と税務 税理士 西村 博史

 ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

【2008年8月】MS法人との会計税務

 MS(メディカルサービス)法人との取引により診療所が事務の合理化、更に節税をはかる場合があります。今回は、MS法人に関する留意点を解説します。

MS法人とは

 MS法人は、診療所の医療機器や土地建物の賃貸、医療事務、院内の清掃などの業務請負をするために院長が出資者となり同族法人として設立されるケースが多いようです。その場合、法人は診療所以外の第三者と取引することは少なく、診療所が業務の一部を法人に委託し同時に節税をはかることが主な目的であると言っても過言ではありません。MS法人の設立そのものは税務上問題ではありませんが、いくつかの留意点について理解することが重要です。

賃貸取引の留意点

 MS法人から建物や医療用機器、一般の事務機器などを賃借し賃料を支払う場合には、いずれも通常の賃料を大きく超えない事が重要です。また必ず賃貸借契約書を作成し、契約関係に基づく支払である事を明らかにします。

 法人所有の建物に、診療所の負担で大規模な修繕を行った場合には、法人への贈与とみなされる場合がありますからこの点は特に要注意です。

 小修繕や日常の維持費用を法人負担とするか診療所負担とするかも契約しておきます。

リース取引の留意点

 リース契約をする場合にはリース期間終了後の再リース料に注意が必要です。一般的にはリース期間終了後には再リース料の支払が通常ですが、再リース料は非常に低額の名目的な金額となります。従ってリース期間終了後には必ずリース料を大幅に減額する必要があります。

 また、リース期間がリース物件の法定耐用年数より大幅に短い場合には契約したリース期間そのものが否認の対象となりますので留意が必要です。

業務委託の留意点

 医療事務や清掃業務、経理事務等を委託する場合には、委託事務に要する時間や専門性、必要性などを考慮し第三者に外部委託した場合に想定される委託料を基本として決定します。これらの業務を外部委託する事により省力化できる診療所の人件費等の金額も参考要素にはなるでしょう。

 業務委託の場合にも、委託契約書を作成し、業務の量や内容等が大幅に変化した場にはその都度金額改定をする事が重要です。

高額取引と同族会社行為計算の否認

 同族会社への支払金額が不相当に高額であり不当に税額が減少する場合には、税務署が職権でその取引を認めない場合があります。よほどの場合でない限りこうした行為計算の否認が行われることは稀ですが、税務調査が行われる場合を想定して取引の金額には一定の合理性を主張できるように日ごろから準備しておく事が必要です。

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