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従業員の住民税と税務調査

経営に役立てる医院の会計と税務 税理士 西村 博史

 ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

【2007年7月】従業員の住民税と税務調査

 マスコミでは、住民税の増税により納税者が市役所窓口に殺到する様子が報道されています。高齢者やパートアルバイトなどに負担の大きい住民税増税ですが、診療所などに対する院長の税務調査の過程で、従業員やその家族の住民税申告漏れが大きな問題となる事例が懸念されます。今回は住民税増税で改めて問題となる従業員の住民税について取り上げます。

税務調査で浮上する従業員の課税問題

 税法上、従業員の年間の給与が103万円(住民税では100万)以内である場合には、その従業員はその夫などの控除対象配偶者又は親などの扶養親族となり、夫や親の所得から最低38万円の配偶者控除や扶養控除が差引かれることになります。

 しかし、現実には、従業員の所得が103万を超えているにもかかわらず夫や親の扶養親族等としている誤りが多く、診療所の税務調査の過程で従業員の夫や親の申告内容と照合することにより指摘されることになります。院長の税負担が増加する訳ではありませんが、最悪従業員の退職や出勤時間の短縮という事態につながるため、他人事では済まないことになります。

追徴額は過去3年分

 従業員本人の住民税は未払いとなっていますから、過去3年分を追徴されることになります。しかし事は本人の住民税だけでは解決しません。

 夫や親の扶養控除等が取消されるため、夫や親の所得税と住民税が過去3年分追徴されます。従業員の給与が年間130万円を超える場合には、健康保険の扶養家族でなくなる可能性が大きくなりますから、国民健康保険料も増加します。

 更に、夫や親がその勤務先から扶養手当を受給している場合、その返還を求められますし、従業員本人が母子家庭や失業手当の受給者、年金受給者である場合などは、更に事態が深刻となります。

 従業員の住民税問題では済まないため、種々の追徴額などが100万円以上となる事例が少なくないのが実情です。

給与支払報告書の提出

 従業員の給与については、その年分の給与を翌年1月末日までに従業員の居住地の市役所等に届け出ることになっています。この手続きは診療所が行うこととなりますが、従業員全員について、原則どおり届出が為されておれば問題はないのです。

 しかし、従業員からの要請などにより給与支払報告書の提出をしない場合にはことが発覚した時に大きな問題を抱えることになるのです。

 住民税率が一律10%に増税され、今後税務調査等などを契機にますますこの問題が浮上する可能性が大きくなることを念頭に置き、問題があれば従業員としっかりと話し合うことが重要です。

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