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親族間経費の税務と会計

経営に役立てる医院の会計と税務 税理士 西村 博史

 ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。税制の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

【2006年9月】親族間経費の税務と会計

 院長とその親族間の経費については、税務も複雑で、税務調査においても種々のトラブルが発生します。今回は、親族間経費について、合理的な利用方法を考える事とします。

生計を一にする親族

 院長とその親族が生計を一にするかどうかで、その親族に対する経費の税務上の取扱が大きく変化します。生計を一にするとは、原則として同一家屋に起居する状態を言います。但し、別居状態であっても、その親族の生活費の大部分を仕送り等により補っている等の特別の場合には、生計を一にしている親族であるとみなされます。

 従って、独立して生活できる機能を備えた2棟の家屋に別居する親族がそれぞれの収入をもって生活している場合には、別生計の親族であると推定できる事になります。

青色専従者給与

 生計を一にする親族に支払った給与は、これを院長の所得計算上必要経費とする事はできません。これは、恣意的な所得分散を防止する観点から規制されているもので、いわば個人単位課税の例外として世帯単位課税を実現しようとするものとも言えます。

 上記のように原則として必要経費とならない専従者に対する給与ですが、青色申告を行う院長が事前に税務署に申請を行った場合には、労務の対価として相当額である限り、例外的に必要経費に算入される事になっています。

親族への家賃等の支払

 生計を一にする親族名義の建物を診療所として使用している場合や、親族名義の車両を診療用に使用している場合に、その賃借料を親族に支払ったとしても、院長の所得計算上は必要経費とする事はできません。

 この点、最近の判例では、弁護士である夫が妻である税理士に支払った税理士報酬の取扱について、納税者の主張にもかかわらず、必要経費に算入できないという結果となっています。筆者は、こうした相当な経費を必要経費と認めない税制は到底合理的なものではないと考えます。然しながら、現状で生計を一にする親族に対する対価の支払には認められない可能性が極めて高い事を念頭に置く必要があります。

 支払対価が必要経費とならない半面、その生計を一にする親族の家屋の固定資産税や車両の自動車税等の経費やその減価償却費は、医業に使用している限り院長の所得の計算上必要経費とする事が可能です。

 また、これらの取扱はあくまで生計を一にする親族に対するものであり、別生計の親族に支払った経費等については、医業遂行上必要なものであれば必要経費となる可能性が高い点を念頭に置きましょう。

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