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わがままなベテラン看護師を解雇できるか【2021年4月】

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

わがままなベテラン看護師を解雇できるか【2021年4月】


 10年近く雇用している看護師がいます。それなりに能力があるのですが、わがままなところがあり、最近では彼女のせいで新人職員がすぐに辞めてしまいます。これまで我慢してきたのですが、もう限界なので辞めさせようと思っています。協調性がないという理由で解雇できるでしょうか。


 わがままといっても様々ですが、具体的にどのようなことで困っているのでしょうか。


 少しの時間ですが、遅刻を平気でします。理由を聞くと、家族の病気などその度にもっともそうな理由を言います。新人職員に対する態度も横柄です。口頭では何度も注意しています。つくづく「過去と他人は変えられない」と実感しています。


 作家の瀬戸内寂聴さんは「過去と他人は変えられない。しかし見方は変えられる」と言っています。能力があるなら、その方に対する「見方」を変えて、引き続き雇用することはできませんか。


 そのように考えたこともありますが、もう無理です。


 労働裁判を多く手掛けている弁護士によると、100の言より1通のリアルな書面といいます。書面で注意するわけにはいきませんか。


 そんな悠長なこと言っておられません。すぐ辞めてもらいたいです。私の友人の診療所で、解雇した職員が労働基準監督署に駆け込み、労基署の指導で1カ月分の賃金を支払って解決したそうです。


 労基署がチェックするのは解雇が合理的なものかどうかではなく、少なくとも30日前に解雇を予告したか、即時解雇であれば30日分の予告手当を支払ったかどうかだけです。友人の方の場合、トラブルにならなかったのが幸運でした。労働契約法では「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合はその権利を乱用したものとして無効とする」となっており、解雇権乱用かどうか争われると裁判ではほとんど認められません。


 我慢するしかないのですか。


 「退職勧奨」はいかがですか。簡単に言えば「あなたはうちには合わない。よそへ行った方が、能力が発揮できる。できたら辞めていただけないか」と言って退職の合意を取ることです。


 そんなにうまくいきますかね。


 最初は拒否するかもしれませんが時間がたつと受け入れる場合があります。しかも周りの人から嫌われているということが分かれば、より受け入れる可能性があると思います。ただしあまりしつこくあるいは長時間にわたって退職勧奨をしないことです。そのやりとりを従業員が録音していることもありますから、平穏に話を進めることが大切です。


 事業主に不利になることはありますか。


 雇用関係の助成金が一定の期間支給されないか、減額されることがあります。将来「事実上の解雇だ」などと訴えられないためにも、大切なことは必ず退職合意書を取ることです。退職合意書のフォーマットは以前この欄でも紹介しましたが当事務所のホームページからダウンロードできますので、よろしければご活用ください(https://www.sogaoffice.jp/format/)。

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