奈良県保険医協会

メニュー

針刺し事故の使用者責任と対策

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

針刺し事故の使用者責任と対策
【2014年12月】


 私のところは歯科で職員は11人です。医療廃棄ボックスに入っていた注射針がはみ出していたため、職員の大腿部に針があたり傷つきました。地域の設備の整った医療機関で診てもらったところ検査で異常なしということになりひと安心しました。針刺し事故は医療機関では多いのですか。


 労災申請の代行業務で、幸い肝炎などの感染になるというような大きな事故には至らないものの、年に何件か労災申請することがあります。全国的には年間約5万件発生しています。保健衛生業の年間の休業4日以上の死傷病報告が約1万件ですから、かなり多いと言えます。


 針刺し事故に遭った職員は私の指示したとおりに針を片付けなかったために事故を起こしましたが、それでも労災保険は使えますか。


 故意に事故を起こしたわけでないので、検査などで労災保険は使えます。


 仮に、検査の結果肝炎など陽性反応があった場合、「針刺し事故」が原因か、前々から陽性であったか分からないこともあるのではないですか。


 そのようなときは労働基準監督署は法的に義務付けられている健康診断の結果報告書の提出を求めることがあります。健康診断は労働時間が短いパートは任意ですが、医療機関では職員については全員健康診断をするようにしていただきたいものです。


 針刺し事故防止について「リキャップはするな」と注意するなど、私もそれなりに対応していたのですが、今回事故が起きてしまいました。労災事故となると私ども使用者も責任を問われますか。


 使用者には安全配慮義務がありますから責任を追及されることもあります。常時従業員が10人以上の場合、「衛生推進者」を配置し、安全衛生管理体制を整えることか労働安全衛生法で義務付けられています。労働基準監督官が臨検に入ると、この点は指摘するようになりました。また、労災保険給付には慰謝料が含まれていませんから、労災から給付があっても慰謝料請求の損害賠償事件に発展することが多くなりました。


 針刺し事故を無くすにはどんな取り組みが必要ですか。


 厚生労働省も針刺し事故対策を重視していますし、さまざまな医療機関が針刺し事故対応マニュアルを作成しています。これらを参考にすることも大切ですが、私としては「ヒヤリ・ハット」から取り組むことが大切だと思います。今回事故を起こした職員の方からも事故を起こす前に「ヒヤッ」としたり、「ハッ」としたことはなかったか聞くことが大切だと思います。「あなたを責めるのではない、あなたの経験が働く仲間を事故から守ることになる」という立場で聞くことが大切です。職場全体でも個々人の「ヒヤリ・ハット」をみんなのものにしていくことが事故対策の出発になると思います。

雇用問題Q&A

さらに過去の記事を表示