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問題職員が退職届と同時に慰謝料請求をしてきた【2021年12月】

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

問題職員が退職届と同時に慰謝料請求をしてきた【2021年12月】


 あるスタッフが休みがちで、それまではメールだけで連絡を取っていたのが、ある日、突然手紙で「今月いっぱいで退職する」と連絡してきました。しかも、在職中にパワハラを受けたと主張して慰謝料を50万円も請求してきました。このような場合どう対応したらいいでしょうか。


 パワハラについては、何か証拠があるのですか。


 心当たりはありません。
 とにかくこの人がいると職場の雰囲気が暗くなり、周りのスタッフも気を使っていました。引き継ぎ事項もそんなになく、むしろ退職していただければ助かります。
 とはいえ、50万円も慰謝料を請求してきたのには驚いています。支払わなければ辞めてくれないのでしょうか。


 とにかく、今月いっぱいで退職するという申し出ですから、それについて承諾する旨を記載した書面を本人にすぐに送ってあげることが大事です。
 労働契約も契約の一種ですから、通常は申し込みと承諾で成立します。承諾をした旨を連絡すれば、退職について争いはないということになります。


 慰謝料の件はどうなりますか。


 それについては根拠が不明なのですから、その点を文書で問えばいいと思います。通常であれば、請求に至った「法的事実的根拠についてお示しください」という内容の文書を送ればいいと思います。
 慰謝料についてはともかく、少なくとも一番面倒な退職については合意したことになり、後の慰謝料については今後の話し合いということになります。とにかく、根拠がはっきりしないうちは支払う必要はありません。
 根拠について証明義務があるのは、従業員側です。


 労働基準監督署に訴えると言ってきましたが大丈夫でしょうか。


 仮に労働基準監督署から連絡が来ても事実を粛々と説明すればいいと思います。基本的に、労働基準監督署は慰謝料については介入しません。


 賃金締め切り日以降欠勤が多く、支払うべき賃金が少しあります。この賃金についてはどうすればいいでしょうか。


 請求があった場合は、労働者の権利に属する金品を7日以内に支払わなければならないことになっています。


 欠勤した分については、有給休暇を当ててくれと言ってきています。しかも、欠勤の分を充当して余った有給については買い取れと言ってきました。
 退職予定者の有給休暇を買い取らなければいけないのでしょうか。


 原則として、有給休暇は買い取ることはできません。また、有給休暇は勤めているからこそ権利があるので、退職した以降は有給休暇の権利はなくなります。従って有給休暇は買い取る義務はありません。
 ただし、トラブル回避のため、権利のないものについて経営者が恩恵的に支払うことは違法ではありません。

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