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通勤災害と業務災害

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

通勤災害と業務災害
【2009年9月】


 自転車で通勤している従業員がいます。雨の日に傘をさして自転車で出勤している途中でけがをした場合、通勤災害として認められるでしょうか。

A
 傘をさして自転車に乗ることは一般的に禁止されていますが、労災保険法に言う「合理的な方法」でないとはいえないので通勤災害として認められるでしょう。


 通勤災害として認められるには基準があるのでしょうか。

A
 労災保険は業務災害や通勤災害で労働者が負傷した時に支給されます。このうち通勤災害は「通勤とは、労働者が就業に関し、住居と就業の場所との間を、合理的な経路及び方法により往復することをいい、業務の性質を有するものを除くものとする。」と定義されています。したがって、雨の日に傘をさす程度であれば「合理的な方法」といえるので労災保険からの給付はあります。ただし、泥酔して運転していたような場合は「合理的な方法」といえないので通勤災害とは認められないでしょう。ちなみに、自転車の二人乗りも一般的には禁止されていますが、転倒してけがをした場合「合理的な方法」として取り扱われています。


 「業務災害」と「通勤災害」は何か違いがあるのですか。

A
 違いはあります。業務による傷病か通勤による傷病かでは事業主の責任が違います。極端なことをいえば、業務災害で休んでいる人は労働基準法上解雇することができません。しかし、通勤災害で休んでいる人は労働基準法上は解雇できるのです。


 給付の中身は違うのですか。

A
 ほとんど同じです。しかし、業務災害は療養補償給付、休業補償給付というようにすべて「補償」という字が付きます。しかし通勤災害は補償という字は付きません。


 通常は公共交通機関で通勤し、子どもを保育園に連れていくため雨の日だけ自動車で通勤する従業員がいます。たまたま自動車で来たとき事故を起こした場合、通勤災害として認められるでしょうか。

A
 事業所に届け出た方法と違う方法で通勤した場合でも「合理的な経路及び方法」であれば通勤災害として認められます。


 寄り道をした場合はどうでしょうか。

A
 「往復の経路を逸脱し」または往復を中断した場合は、逸脱中断中はもちろんその後も通勤災害にはなりません。ただし、日常生活上必要な行為で厚生労働省が認めるものは元の経路に復した場合はその後の事故は通勤災害になります。


 例えば帰宅途中にスーパーで買い物をする場合はどうでしょうか。

A
 これは日用品を購入するための日常生活上必要な最小限な行為ですから、スーパーで買い物中の事故は通勤災害となりませんが、通常の経路に復すればその後の事故による傷病は通勤災害となります。


 従業員たちがたまに居酒屋で「飲み会」をすることがありますが、この場合はどうですか。

A
 「飲み会」は通常業務ではありませんし、「日常生活上必要な行為」ともいえませんので「飲み会中」とその後の事故による傷病は通勤災害といえないでしょう。


 パート職員が夫の扶養になっているので健康保険で治療したことがありますが、問題はあるのでしょうか。

A
 健康保険は一般的には業務災害・通勤災害には使えませんから、後で健康保険から返還請求があると思います。したがって従業員には通勤災害には決して健康保険を使用しないよう徹底しておくことが大切です。そうしておきませんと医療費を健康保険に返還するなど当人が大変な負担になります。

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