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有給休暇5日取得の義務があるのに、休まない職員がいる【2022年10月】

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

有給休暇5日取得の義務があるのに、休まない職員がいる【2022年10月】


 有給休暇5日取得が義務になったと言われているのに、うちのクリニックで取らない人がいます。以前、取らせないと罰則があると聞きましたが、それで罰則を受けたという話は聞いたことがありません。このままで問題ないのでしょうか。


 確かに労働基準監督署が臨検に来ても、有給休暇管理簿の有無をチェックするだけで罰則を受けたという話は聞いたことがありません。しかし、2019年4月に労働基準法が改正されて、有給休暇の年5日取得が義務付けられました。企業規模に関わらず、2019年4月から有給休暇の年5日取得が義務化されています。職員が有給休暇を取得しない理由は、どんなことですか。


 ベテランの職員ですが「家にいると仕事のことが心配で、職場に来て仕事している方が気楽だ」と言うのです。


 確かに引き継ぎなどが面倒で、休まないで自分で仕事したほうが楽だという意見はよく聞きます。自分にしか分からない業務ができてしまうと、引き継ぎのために仕事を整理しなければならなくなり、かえって大変なのです。しかし、これは危険なことです。その人にもしものことがあると、職場全体に影響が出てしまいます。進んだところでは、ベテランなど、幹部に意識的に長期の休みを取らせ、代わりの若い人に幹部の仕事をさせ成長のチャンスをつくっています。


 当院の場合はそんな大げさなことではなく、有休を取る習慣がこれまであまりなかったのが原因だと思います。


 労基法改正前の日本では、有休を1日も取らない人が全労働者の16%もいたと言われていました。ヨーロッパでは有休の取得率という考え方はありません。100%が当たり前だからです。そもそも経営者は何のために賃金を支払っているのでしょうか。賃金とは労基法で「労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう」(労基法第11条)と定義されています。しかしこれは極めてあいまいな定義です。賃金は労働者の肉体的精神的な能力、つまり労働力に対して支払います。私は、中小企業においては労働者の生活費だと思っています。労働力の発揮は、労働者のコンディションによって大いに違います。寝不足ではロクな仕事ができません。ある映画監督が「徹夜は百害あって一利なし」と言っていました。


 私が病院に勤務していた頃は、32時間連続勤務をしたこともありました。


 保険医協会・医会で「働き方改革」の話をすると、そういう話がよく出ます。一部には、医療機関で働く人は、自己犠牲的に働くのが当然と考える風潮もあります。しかし休みについて発想の転換が必要です。精神科医の香山リカ氏は「夏休みやお正月休み、有給休暇は、働く人の義務。しっかり休んで気持ちをリフレッシュさせないとよい仕事ができませんからね。無理してでも休まなければならないんですよ」と書いていました(東京新聞2022年8月23日付)。経営者に安全配慮義務があるように労働者にも「自己保健義務」があり、最大のパフォーマンスを発揮するために準備する義務があります。その意味では、休暇・休日は権利ではなく義務なのです。

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