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医療関係者の長時間労働、自己で正しく把握を

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

医療関係者の長時間労働、自己で正しく把握を
【2017年3月】


 電通新入女性社員の過労自殺が労災認定されましたが、残業が105時間ということでした。私の息子は2人とも病院勤務の医師ですが、おそらくそれくらいは働いているのではないかと思います。もしもの時は過労死となるのですか。


可能性はあります。ただし、労働時間がきちんと把握されていればです。


 労働時間は事業主が把握する義務があるのではないですか。出勤簿なり、タイムカードを見ればすぐわかるのではないですか。


 今回の電通の事件でも会社の滞在時間と労働時間のあまりにも大きな開きから問題になりました。パソコンに入力された残業は69.5時間となっていました。これに反論する根拠がなければ過労死認定はなされなかったかもしれません。病院などでも医師の労働時間が正しく把握されているかどうか疑問です。だいたい労働基準法には賃金・労働者の定義はあっても労働時間の定義はないのです。


 労働時間をいい加減に管理している経営者が得をすることになりませんか。


 残念ながらそういう面もあります。労働者が残業代不払いで労働基準監督署に訴えても証拠がないと言って門前払いされることもあります。現在は時間外労働の立証責任は労働者にあります。労働弁護団は「正確な労働時間を把握する義務が使用者にあることを法律上明確」にすべきとしています。


 このままでは過労死する可能性のある医師が相当いるということになりますね。


 医師とは限りませんが、実際に過労死はかなりあると思いますが、認定されるのは氷山の一角です。2015年度は過労死の支給決定件数は93件です。しかし自殺者のうち 2000件は仕事がらみと言われています。


 日本の医療関係者は長時間労働やむなしと思っているのですかね。


 長時間労働が当たり前と思っている方は確かに多いと思います。今すぐに時間短縮と言っても無理がありますが、最低でも労働時間を正しく把握することが大切です。労基法には労働時間の定義はありませんが、判例で「管理監督されている時間」が労働時間というのが定着しつつあります。しかも、労働時間の範囲は広がっています。これまで労働時間扱いしなかった会議や打ち合わせも労働時間になる可能性があります。


 電通事件ではパワハラも過労死の原因だったのですか。


 電通の女性社員のツイッターの書き込みでは明らかにパワハラとなる上司の発言が見られますが、今回の労災認定では私は労働時間のみで判断したと思います。パワハラの労災については、労働基準監督署はほとんど認定しません。


 医療の患者の生命にかかわることもありますから厳しく指導することもあります。その結果うつ病になったときは労災となりますか。


 厚生労働省はパワハラの定義を公表しています。仕事が原因でうつ病になったわけですから労災認定しそうなものですけど、最近はめったに認定しません。しかし、従業員の病気は本人にとっても診療所にとっても損失ですから厚生労働省のホームページなど参考にして対応してください。

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