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勤務初日に遅刻したスタッフを採用拒否できるか【2022年11月】

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

勤務初日に遅刻したスタッフを採用拒否できるか【2022年11月】


 勤務初日に遅刻したスタッフがいます。採用を取り消したいのですができるでしょうか。


 遅刻の理由について、本人は何と言っているのですか。初日に遅刻したからといって解雇は難しいと思います。


 「初めての出社で前日緊張して眠れなかったので、眠るのが遅くなり寝坊してしまった」と言っています。採用後14日以内であれば自由に解雇できるのではありませんか。


 それは誤解です。14日を超えていなければ解雇予告や解雇予告手当の必要がないということです。対応を誤ると、裁判で解雇権の濫用になるかどうか争いになることがあります。


 でも、労働基準監督署に電話で聞いたところ、14日以内であれば解雇手続きは必要ないと言っていましたよ。


 最近は労基署も人手不足で臨時職員が多くなっています。労働基準監督官はなかなか電話に出ませんし、中には労基法に精通していない臨時職員もおり、そういう人が電話に出ることがあります。労働契約法第16条に「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」とあります。安易な解雇はすべきではありません。


 私のクリニックでは試用期間は3カ月となっています。あまりにひどい勤務状態であれば本採用しなければいいのではないですか。


 試用期間中の解雇は通常の解雇よりはいくらかハードルが低いだけで、この場合も、法的な争いになれば「解雇権濫用」の法理が適用されます。


 「本採用しない」ということでもトラブルになるということですか。


 そうです。本採用しないというと、おとなしく辞めた労働者が多かったのは、もともとこの事業所には勤めたくないと思っていたか、労働法について無知で権利意識がなかったためです。最近では労働者から「退職証明書」の交付を求めることがあります。


 退職証明書とは何ですか?


 労基法第22条にある通り、「労働者が、退職の場合において使用期間、業務の種類、その事業における地位、賃金または退職の事由(退職の事由が解雇の場合にあっては、その理由)」などを請求した場合には、使用者は遅滞なくこれを交付しなければならないとなっています。
 いずれにしろトラブルを防ぐためには普段から教育し、遅刻などについては厳しく書面等で注意しておくことが大切です。第一義的には、辞めさせることではなく、スタッフとして成長していくことが目的です。裁判などになると労力と経費が大変です。裁判で争って負けると、裁判の間の賃金を支払わなければなりません。仮に退職させる場合でも退職届を提出してもらうか、退職合意書をもらうことがトラブルを防ぐ上で大切です。
 退職合意書が必要な方は曽我事務所のホームページでダウンロードできます。

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