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子供の看護で頻繁に休む職員を解雇できるか【2021年8月】

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

子供の看護で頻繁に休む職員を解雇できるか【2021年8月】


 8人程度の診療所です。医療事務の経験者ということで3歳の男の子を育てる母子家庭の女性を雇用しました。能力はあるのですが、頻繁に保育所から電話があり子供を迎えに行かざるを得ず業務に支障を来しています。辞めてもらおうと思いますが、問題ありますか。


 辞めてもらうと言っても、その辞め方によっては慎重になる必要があります。解雇を考えているのですか。


 解雇は難しいのでしょうか。


 労働基準法では妊娠・出産に伴う解雇について明確な禁止は定められていませんが、労働契約法で「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする」となっています。
 また、2021年1月から看護休暇を時間単位でも取れるようになりました。小学校就学前までの子を養育する労働者は、事業主に申し出ることにより1人につき年5日まで、2人以上の場合は年10日まで休暇を取得できる制度です。この看護休暇を取ったことにより、不利益な取り扱いはできません。


 時間単位の休みを換算しても、それ以上看護のために休んでいます。5日以上休んでいれば、解雇できますか。


 最終的には裁判所が判断しますが「社会通念上相当である」として、なかなか認められないと思います。多くの裁判官は会社経営の経験がありません。中小企業主には厳しい判断になると思います。


 辞めてもらうように説得するのならいいのでしょうか。


 「退職勧奨」ですね。誠意をもって話すのならいいと思いますが、あまりにも強引にやるとマタハラ(妊娠・出産・育児に関することで不快な思いをさせること)になり、逆に訴えられることになりかねません。


 他の医療機関はどうしているのですか。


 確かに、少し前までは「うちは妊娠したら辞めてもらう」と公言していた先生もいましたが、最近は従業員みんなでやりくりしていくしかないというようになってきています。ある先生はせっかく慣れた人は大切にしたいと言って雇用維持の体制を整えています。


 採用面接で病弱な子供がいるかどうか聞いていいのですか。


 それを理由にした不採用は男女雇用機会均等法で違法の可能性もありますが、はっきりしません。また、一般的に企業は不採用の理由を明示する義務はありません。とはいえ、ハンディがあっても、安心して働ける職場を実現したいものです。その職員には、病児保育の利用を勧めてはいかがですか。


 聞いたことはありますが、簡単に利用できないのではないですか。


 確かに、そういう難点はあります。足りないと言われている保育所数でさえも全国で3万7652ヵ所(2020年)ですが、病児保育の実施箇所は約3374ヵ所(2019年度)しかありません。病児保育を実施している医師に聞いたところ、命を預かるため責任が重く、自治体の支援があっても補助金が少ないなど、条件が厳しいため実施箇所がなかなか増えないようです。

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