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出産予定のスタッフの有給取得を断ったらパワハラと言われた【2022年1月】

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

出産予定のスタッフの有給取得を断ったらパワハラと言われた【2022年1月】


 出産予定のスタッフが「産前の6週間は産休を取らずに有給休暇にしたい」と言ってきました。その方が出産手当金より収入が多くなるというわけです。地元の労働基準監督署に確認したところ、産前6週間と産後8週間は働かせられないとのことだったので、有給休暇の取得を許可しませんでした。


 労働基準法では「使用者は6週間以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない」となっています。つまり請求しなければ働かせてもいいのです。回りくどい言い方ですが、働けるのですから年次有給休暇を請求できます。


 労基署は働かせることができないと言っているのですよ。


 先生がどのような聞き方をされたか分かりませんが、その相談を受けた労基署の職員がどんな人か確認されましたか。
 最近では、労基署も監督官を増員しているにもかかわらず、まだまだ人手不足で非正規職員の割合が高くなっています。むろん非正規でも十分な知識を持っている職員もいますが、中にはそうでない人もいます。疑問に思った時は別の労基署に聞くか、あるいは労働法に詳しい社会保険労務士などの専門家に確認した方がいいと思います。
 労基署によりますが、書面で回答してくれるところもあります。


 また、この時に他の職員の前で「出産前に有給休暇などとんでもない。休んで出産手当金を受け取ればいいだろう」と少し大きな声で言ったことがパワハラだと言われました。何でもかんでもパワハラと言われたらかないません。このようなスタッフに対してどのように対応すべきでしょうか。


 大企業ではハラスメント防止対策がすでに実施されていますが、中小企業も2022年4月より義務化されます。パワハラとは「職場において行われる①優越的な関係を背景とした言動であって、②業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、③労働者の就業環境が害されるもの」とされています。従って、他の職員の前で大声で叱責することはハラスメントとされる可能性があります。「就業環境を害する」とは労働者が精神的に傷つけられたと感じることです。この判断に当たっては、厚労省の説明では「平均的な労働者の感じ方」すなわち、同様の状況で当該言動を受けた場合に、社会一般の労働者が、就業する上で看過できない程度の支障が生じたと感じるような言動であるかどうかを基準とすることが適当とされています。
 簡単に言えば労働者が傷つけばパワハラとされる可能性があるということです。ハラスメント対策を真剣に考える必要があります。


 ハラスメント対策と言っても何をやればいいのですか。


 経営者に求められるハラスメント対策は、①パワハラなどハラスメントをなくすというトップの決意表明、②規定の作成、就業規則の改正、③規定の周知、④相談窓口の設置、⑤日常的な教育──とされています。なかなか大変ですが、まず①と②を実施することです。規定例などが必要な方は、当事務所にメール(soga@sogaoffice.jp)を頂ければワードの文例を送信します。

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