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退職代行サービスから職員の退職の意思が伝えられた

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

退職代行サービスから職員の退職の意思が伝えられた
【2020年9月】


 退職代行サービスの会社から当院の医療事務担当者について退職する旨の連絡がありました。こんなことで退職を認めなくてはいけないのでしょうか。


 退職の意思表示があったということで認められることになります。最近この種の代行サービスが増加し、弁護士事務所が行っている事例もあります。


 当院に来たのは法律事務所ではありません。法的に問題はないのでしょうか。


 退職の意思を伝えるだけですから違法にはなりません。「問題あり」としている弁護士もいますが、裁判になるほど問題になった例は聞いたことはありません。弁護士の場合は代理権がありますから不払残業代、在職中のパワハラ・セクハラについての損害賠償を請求してくることがあります。
 いずれにせよ辞めたい人はどうしようもありません。


 こんなことぐらい本人が電話してくればいいのに、どうして代行サービスの会社に頼むのでしょうか。


 最近の若い人には電話が苦手な人もいます。ある退職代行サービス会社によると代行を依頼する理由は①上司が怖い②職場の人手が足りなくなる(気まずい)③恥ずかしい④横領などの不正を隠している――などがあるそうです。


 当院は退職する場合、3カ月前に申し出るよう定めています。それでもすぐに退職できるのでしょうか。


 簡単に言えば、退職届を提出して14日すれば有効になります。退職の主な理由は以下の通りです。①残業・休日出勤など拘束時間が長い②人間関係の問題やパワハラ③給料が安い④やりがいや達成感を感じなかった⑤キャリア成長が見込めない⑥企業の方針・社風が合わない⑦将来性に疑問を感じた⑧人事・評価に不満⑨体調不良・体力がもたない⑩そもそもやりたい仕事ではなかった――です。
 その他、女性では、結婚・出産のため、職場に同性がほとんどいない、パワハラやセクハラ、いじめ、病気、両親の介護、子供との時間を増やしたい、男女平等に仕事をくれない、キャリアアップしたいなど、その理由は多様です。社員の60%が一度は会社を辞めたいと思ったことがあるという調査結果もあります。退職による混乱を防ぐには「その人しか分からない仕事」をなくすことが大切です。これは業務改善にもつながります。


 代行サービスの手数料は高いのですか。


 おおむね2万円から5万円です。これを高いかどうか判断するのは人それぞれですが、退職を悩んでいた人の中には安いと言う人もいます。退職するスタッフは、雇用主に退職する本当の理由を言いません。日頃よりコミュニケーションを良くし、スタッフが定着するよう努めることが大切です。スタッフに支払う給料は、経費ではなく、人材育成のための投資と私は思っています。短期で退職されたのではこれまでの給料はドブに捨てるようなものです。

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