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始業きりぎりに出勤し通勤費も要求するパートスタッフへの対応

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

始業きりぎりに出勤し通勤費も要求するパートスタッフへの対応
【2019年10月】


 当院の診療時間は午前9時半からで職員の始業は9時と決めています。みんな8時45分までには出勤して診療の準備をしているのに、新人のパート職員で一人だけ9時5分前に駆け込んでくる者がいます。他の職員からも不満が出てくると思います。口頭では何度か注意したのですが改めません。やはり書面できちんと注意した方がいいでしょうか。


 先生のところは始業を午前9時と定めていますから、それまでには出勤しているのなら注意をするのは労働基準法上、不適切です。


 私が病院に勤務していた時は、始業時間よりもかなり早く出勤しいろいろ準備していました。こんなことは当たり前ではないでしょうか。


 日本の医療機関は労働時間に関し権利意識が希薄なところがありましたが、これまでは問題にならなかったこともこれからは改める必要があります。ある運送会社で点呼の15分前に出勤するように言ったところ、そこからが労働時間になってしまった裁判例もあります。
 先生の診療所でも事実上始業15分前に出勤を強制していれば、そこからが労働時間になってしまい早出残業手当を請求されても仕方がありません。今年(2019年)の4月からは、経営者には労働時間把握義務が厳しく要求されるようになりました。安易に早出を強制すると残業代不払い問題に発展します。


 そんなもんですかねえ。それと一部のパート職員で通勤手当が支給されないのはおかしいということを言う者がいます。パートにも通勤手当を支給しなければいけないのでしょうか。


 最近相次いだ労働事件の裁判でも、正社員と契約社員の間で必要な費用が異なるわけではないので、通勤費を支給しないのは「不合理」という判決が相次いで出されています。


 私のところには1週間に2日しか来ない職員もいます。この場合も1ヵ月分の定期券を買って与えなければいけないのでしょうか。


 その場合は実費を支払えばいいので定期代を支給する必要はありません。


 正社員には賞与を支給していますがパートには支給していません。まったく支給しないのはまずいでしょうか。


 賞与を支給するかしないかの待遇差が不合理かどうかを判断する基準があります。その基準に照らして「不合理」でなければ支給しなくてもいいのです。


 分かりにくいのですが「不合理でない」ということと「合理的である」ということと何か違いがあるのですか。


 学者によっては「不合理でない」というのは多少グレーでもいいというように説明する人もいます。それに判断基準は①職務の内容②職務内容や配置の変更の範囲③その他の事情となっています。正社員には急患が来たときに重い責任があり、責任の果たし方を評価し賞与を支給し、特に責任を課していないパート職員には賞与を支給しないということは不合理と言えないとされています。
 いずれにしろ今後は手当を支給するかどうか、なぜ支給するかなど経営者は説明できるようにしておかなければなりません。

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