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契約更新を繰り返してきたパート職員が無期転換を要求

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

契約更新を繰り返してきたパート職員が無期転換を要求
【2019年8月】


 週3日のパート職員が期間の定めのない契約に切り替えてくれと言ってきました。毎年更新契約するのでは雇用を継続してくれるかどうか心配だからというのです。


 有期労働契約の期間がどれくらいになるのかが重要です。そのパート職員の方は勤めてどのくらいですか。


 2014年からですから、そろそろ5年になります。


 2013年4月以降の有期労働契約をしている労働者について、5年を超えたときは本人が申し込めば期間の定めのない労働契約になるよう労動契約法が改正されました。つまり無期転換ルールができたわけです。


 これは断れないのですか。


 断れません。労働契約法で、2以上の有期労働契約の期間を通算して5年を超える労働者が、労働契約の締結を申し込んだときは「使用者は承諾したものとみなす」となったからです。


 労働契約が終身雇用になってしまうのですか。


 放置しておくと定年のない契約になってしまいます。


 正社員には定年がありますよ。


 しかし、それが無条件には無期転換したパートには適用されません。やはり無期転換したパート用の就業規則を作成して、定年も正社員と同じにしておくことが必要です。


 無期転換ということは正社員にするということですか。


 いいえ。労働条件はこれまでと同じでもいいのです。ただ期間の定めがないということだけです。


 これまでは更新の度に時給など相談して決めてきましたが、その点はどうなるのでしょうか。


 賃金の変更などはその都度話し合って決めてもいいと思います。しかし無期転換社員については見方を変える必要があります。一時的な雇用から長期展望に立った雇用になるわけですから、教育体制なども再検討して能力を伸ばせる体制にし、より責任のある仕事をしていただくようにすべきと思います。企業の中には短時間正社員制度を導入しているところもあります。こうしておけば労働時間は短いものの責任ある業務を行うことも可能です。


 当院は定年が60歳です。65歳までは雇用義務があるので1年契約で雇用しています。この人たちも5年たつと無期転換してしまうのですか。そうすると終身雇用になってしまいます。


 嘱託などで定年後引き続き雇用される有期雇用労働者についても、無期転換権が発生します。このような場合は適切な雇用管理に関する計画を作成し、都道府県労働局長の認定を受けておけば5年経過しても無期転換権申し込み権は発生しないようにできます。


 計画作成は手間がかかりますか。


 簡単な書類です。厚生労働省のウェブサイトでダウンロードできます。対象者がいなくても労働局長の認定を受けることができますから、早めに手続きをした方がいいと思います。

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