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雇用保険未加入診療所だが、パート職員から退職失業給付を要求された

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

雇用保険未加入診療所だが、パート職員から退職失業給付を要求された
【2017年10月】


 最近、退職するというパート職員から「失業給付をいただきたい」と言ってきました。「失業給付をいただけない場合それに代わる一時金がほしい」と請求してきました。どう対応すべきでしょうか。


 労働時間はどれくらいあったのでしょうか。


 私の診療所の診療時間は午前9時から午前12時までです。職員の労働時間は午後1時までとしています。
 しかし、1時前にも業務のない者は帰らせていました。パート職員だけでしたから雇用保険にも加入していませんでした。


 雇用保険は1週間の所定労働時間が20時間以上でかつ31日以上継続して雇用されることが見込まれる場合は加入させなければなりません。
 なぜ雇用保険に診療所として加入しなかったのですか。


 パートの労働時間が契約では4時間で週5日出勤ですが、そんなに働くことはめったにありませんでした。全体として週20時間はいかないと思っていました。


 それでも契約では週20時間となっています。職員の皆さんは診療開始時刻ピッタリに出勤していたのですか。


 いえ、9時に診療を始めるには、その15分前にはいてもらわないと困るので、8時45分には来てもらっていました。


 そうすると、それも労働時間になります。やはり、実質1週20時間は超えていたのではありませんか。さかのぼって事業所として雇用保険に加入した方がいいと思います。


 さかのぼって加入してすぐに失業保険をもらうようなことをしていいのですか。火事になってから火災保険に加入するようなものではありませんか。


 雇用保険は強制保険ですから、さかのぼって適用できます。


 雇用保険に加入することを明確にするため書類を取り交わしたいと思いますが、どのような書類がありますか。


 もともと、労働基準法等では労働条件は書面で通知しなければなりません。「労働条件通知書」の見本は、曽我社会保険労務士事務所のウェブサイト(http://www.sogaoffice.jp)からダウンロードできます。


 1時より早く帰る者には分単位で計算した賃金しか支払っていません。これは構わないでしょうか。


 構いません。事業主の都合で働かせなかったときは労基法上平均賃金の60%を休業手当として支払わなければなりません。例えば所定労働時間が4時間ですと2.4時間の賃金は支払わなければなりません。
 3時間働いて早退した職員に3時間分支払ったとすると、4時間の60%を超えていますから労基法上問題はありませんが、パート職員の不満は残ります。早めに仕事が終わっても、約束の額は支払った方がいいと思います。

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