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職員同士の不倫が発覚したが、懲戒解雇できるのか

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

職員同士の不倫が発覚したが、懲戒解雇できるのか
【2017年9月】


 夫のいる女性職員と独身の男性職員とが不倫関係にあることが分かりました。他の職員への影響を考えても見過ごすことができないと思います。2人とも懲戒解雇にしたいと思います。問題はあるでしょうか。


 不倫は基本的には個人的な問題です。事実確認はされたのですか。


 院内でうわさが広がりました。他の職員への影響もありますので私も確認のため知り合いの探偵に調査を依頼し、証拠をつかみました。これは人の道に反する行為ですので懲戒解雇したいと思います。


 しかし、私生活上の行為に関して裁判になった場合懲戒解雇が認められる可能性は少ないと言われています。つまりその不倫行為の「悪影響が相当重大であると客観的に評価される場合である」と認められるときだけ懲戒解雇が認められますが、実際は難しいです。ある医療機関では、このような事例で懲戒解雇したところ逆に職員から訴えられ多額の慰謝料を支払うことになってしまいました。


 うちの就業規則には「院内の秩序、風紀を乱した」ときは懲戒解雇するとなっています。


 例え就業規則にそのように記載されていても、実際にはかなりひどい程度でないと認められていません。例えば、妻子ある教師が教え子の母親と不倫関係に陥って生徒への影響が心配される場合とか、バス運転手が未成年のバスガイドを妊娠させバスガイドが中絶手術することになったというような事例です。


 それでは普通解雇はどうでしょうか。私としてはもう顔も見たくありません。


 ともかく私生活の問題ですから簡単に解雇ということにはなりません。むしろ退職勧奨して退職合意書を取った方がいいと思います。解雇はその後、考えた方がいいと思います。
 退職勧奨とは簡単に言いますと「あなたはどうもうちの診療所には向かない。できたら退職してくれないか」といった具合です。2人の関係がみんなの知るところになっていれば本人たちも居づらいと思いますので応じてくれる可能性は高いと思います。このとき大切なことはこれを誰が伝えるかということです。当人たちが最も信頼し尊敬している人が適任です。


 そうすると私しかありません。つらい役ですね。


 中小事業所経営者のつらいところです。


 退職届をもらうのですか。


 そうです。しかし、今後のトラブルに対応するために退職合意書を交わした方がいいと思います。特に雇用保険の失業給付のとき事業主都合か本人都合かでよくもめます。退職合意書で事業主都合であることを明記しておけば相手も同意しやすいと思います。


 事業主都合と本人都合では失業給付が違うのですか。


 本人都合だと退職後3ヵ月の支給停止があり、しかも受給期間が短くなります。事業主都合だと7日の待機が経過すると失業給付の権利が発生します。退職合意書は曽我社会保険労務士事務所のウェブサイト(http://www.sogaoffice.jp/)からダウンロードできます。

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