奈良県保険医協会

メニュー

わがままな職員を退職させたい

雇用問題Ｑ＆Ａ　社会保険労務士　曽我　浩

　「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
　なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

わがままな職員を退職させたい
【2017年4月】

Ｑ
　歯科医院をしています。従業員は女性ばかり5人です。10年勤めた職員で、時間は5分とか10分とか短いのですが遅刻が目立ちます。解雇したいと思いますが、どんな手続きが必要ですか。

Ａ
労働基準法上は30日前に予告するか平均賃金の30日分支払えばいいのですが、解雇と言ってもそんなに簡単にできません。「客観的に合理的理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合はその権利を乱用したものとして、無効とする」（労働契約法）となっています。解雇にしてトラブルとなった場合、時間と経費がとんでもなくかかります。解雇しようとした経営者が、相談した弁護士から「2000万円用意してくれ」と言われた事例もあります。退職勧奨はしましたか。

Ｑ
　退職勧奨ですか。どういうことですか。

Ａ
　簡単に言えば、該当する職員に対して「あなたはどうもうちの医院には合わない。よそへ行った方が、能力を発揮できると思うからできたら退職してくれないか」と言って退職を勧奨し、退職届を提出してもらうことです。退職勧奨で大切なことは、退職勧奨を受ける人に対して「礼儀」を尽くすことです。大企業などでは安易な気持ちで退職勧奨を行ったため、退職勧奨を受けた人が自殺するケースもあるそうです。

Ｑ
　とてもわがままな人で、自分勝手で気が強く、そんな自殺をするような人ではありません。

Ａ
　それならばなおのこと退職届をいただく努力をするべきです。解雇ということになると、こじれる可能性が大きいです。大企業で期間雇用されていた元臨時工で、15年間裁判を闘った人から話を聞いたことがあります。雇い止めの言い方があまりにも人を人と思わない言い方だったので思いがけず長期の裁判になってしまったと言っていました。遅刻が多いということですが、どのくらいしているのですか。

Ｑ
　週5日勤務の職員ですが、週のうち3回は遅刻をしています。それに私に対して横柄な口をききます。

Ａ
　その職員に注意しましたか。口頭だけではだめです。書面で注意しないと争ったとき証拠になりません。

Ｑ
　どんな書面ですか。

Ａ
　2016年1月号の当欄で紹介した「業務改善指導書」（イエローカード）です。解雇専門の弁護士の話では、3回渡すと多くの人はやめていくと言うことです。

Ｑ
　その職員と私が話すと、すぐ喧嘩になってしまいます。私はこういうことは好きでないので私に代わってその職員に退職するように言ってくれる人はいませんか。私だけでなく、彼女の同僚の職員も嫌がっています。

Ａ
　退職勧奨するときに一番大切なことは「誰が言うか」ということです。アメリカではジョージ・クルーニー主演の映画『マイレージ・マイライフ』のように解雇請負専門会社がありますが、日本では医院の最高責任者である先生が言う以外ないと思います。
　法的なこともありますから弁護士などに立ち会ってもらうことはあり得ます。しかし、これでうまくいく保証はありません。とりあえず、解雇も視野に入れながら誠意を持って話し合うことから始めたらいかがでしょうか。

雇用問題Q&A

さらに過去の記事を表示