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閉院の際、トラブルなく職員に退職してもらうには

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

閉院の際、トラブルなく職員に退職してもらうには
【2017年2月】


 体調も思わしくなく後継者もいませんので医院を閉めようと思います。スタッフはパートも含めて4人です。トラブルなく職員に退職してもらうには、どのようにしたらいいでしょうか。


閉院のことは職員の方はご存知ですか。突然の提案は拒否されることがありますから、早めに伝えた方がいいと思います。


 いろいろなところに相談されて、かえってこじれることはありませんか。


 確かにそういうこともありますが、職員の方々のことを考えると準備のこともありますから、早めの方がいいと思います。職員の方々には閉院の必要性や回避するための努力をしたことなど説明し、何とか納得してもらうよう努力してください。
 一般的にトラブルになるのは退職理由です。はっきりと事業主都合の退職であることを明確にすることです。解雇とすることも可能ですが、できれば「勧奨による退職」にしたほうがトラブルは少なくなります。


 それだと、退職した職員が失業給付を受けるうえで不利になりませんか。


 「勧奨による退職」は自己都合ではなく事業主都合となり、失業給付は解雇と同じです。解雇でないので法律的には必要ありませんが「解決金」という形でいくらか支払った方がトラブルになりにくいと思います。
 また、有給休暇は退職してしまうと権利がなくなりますが、買い取ることは違法ではありません。法的には買い取る義務はないにせよ、このような場合はある程度配慮した方がいいと思います。


 労働基準監督署に駆け込まれることはありませんか。


 労基署は退職勧奨が正当かどうかの判断はしないので、駆け込まれても何の心配もありません。ただ弁護士などに相談されると退職勧奨の必要性、回避努力、よく話し合ったかどうかなど聞かれると思います。


 賞与などはどうなりますか。今までは出勤率に応じて支払っていました。


 賞与は利益還元金ですから必ず支払わなければならないというものではありません。しかし、トラブルなく退職していただくためには配慮が必要です。


 こじれると、最悪どうなりますか。


 トラブルの原因が解雇であるとみなされると、弁護士費用も含めて一人当たりの解決金が1000万円以上かかることもあります。したがって誠実に話し合い、なるべくトラブルにならないようにしていただきたいと思います。不安なときは労働局の「あっせん」も利用できます。学識経験者など第三者が入り双方の主張をまとめ、解決を促進してくれます。解決金などは裁判と比べるとかなり低額になっています。


 解雇の時の相場はどのくらいですか。


 この制度は正解を導くものではなく、双方が納得する点を導くものです。一人でも加入できる労働組合「ユニオン」などは賃金の12ヵ月分の解決金を要求したりしますが、あっせんでは3ヵ月分程度が多いと思います。いずれにせよ話し合いがついたら「退職合意書」を結ぶことです。見本は当事務所のホームページ(曽我社会保険労務士事務所)でもダウンロードできます。

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