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診療所内での休憩時間の賃金は

雇用問題Ｑ＆Ａ　社会保険労務士　曽我　浩

　「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
　なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

診療所内での休憩時間の賃金は
【2016年2月】

Ｑ
　歯科医院を経営しています。パートを募集したところ応募者がありました。本人は午前9時から午後5時までの勤務を希望しています。当院は、昼休みは12時から午後2時までです。この間職員は医院にいます。昼休みでも拘束している場合は賃金を支払わなければならないのでしょうか。

Ａ
　例えば、診療所を外出するときは医院長の許可が必要であっても、診療所内で自由に休憩できる場合は休憩時間となり賃金を支払う必要はありません。ここで注意したいのは、12時までに診療が終わり職員は自由に休憩を取ることができるかということです。

Ｑ
　患者さんが12時までに帰ることはまずありません。

Ａ
　その間、職員はどうしていますか。

Ｑ
　私が患者さんを治療していますし、私もいろいろな指示をすることがありますから、待機しています。そのほかカルテの整理など雑用もかなりあります。

Ａ
　そうすると12時から休憩を取ったとは言えないことになります。さまざまな作業もしていますし、たとえ手待ち時間となり具体的な作業に従事していなくても労働時間となり、賃金を支払わなければならない労働時間となります。労働時間について労働基準法上は定義がありませんが、判例で確立しており、「労働者が使用者の指揮命令におかれている時間」をいいます。このため、例えばビルメンテナンス会社の職員が仮眠している時間も労働時間とされています。

Ｑ
　昼休みでも電話がかかってくることがあります。昼食をとりながらでも電話に出ることがありますが、これはどうなりますか。

Ａ
　完全には自由になる時間ではないとみなされ待機時間等となり労働時間とみなされる可能性もあります。

Ｑ
　そうすると電話番を決めて休憩を交代で取るようにし、電話番には賃金を支払うことになりますか。

Ａ
　厳密にはそうなります。

Ｑ
　でも、それでは医院の経営が成り立たないのではないですか。

Ａ
　診療報酬が引き下げられる中で医療機関の経営は確かに大変ですが、休憩時間や労働時間についての職員の不満は意外と大きいものがあります。なかには昼休みの時間を留守番電話にしたところもあります。職員とのコミュニケーションを良くし、改善に向けての取り組みを心がけることが大切です。

Ｑ
　ほかに労働時間に関する注意点はありますか。

Ａ
　パートの方は、9時に出勤すればいいのですか。

Ｑ
　そうです。

Ａ
　それであれば問題ありませんが、9時が診療受付開始であるため15分くらい前に来て清掃したり診療準備をしたりすることを義務付けると、それも労働時間となります。医療機関は患者さんが相手なので労働時間は単純ではありません。

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