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マイナンバー実施に伴う労務管理上の注意点

雇用問題Q&A 社会保険労務士 曽我 浩

 「月刊保団連」の好評連載記事から、著者および発行元の許可を得て転載して紹介します。
 なお、ここに掲載した記事は、それぞれ掲載時点の情報です。関係法令の改定や行政当局の新たな通知等によって、取扱いが変更されている事項が含まれている可能性があります。ご高覧にあたって、予めご了承ください。

マイナンバー実施に伴う労務管理上の注意点
【2015年6月】


 タレントの上戸彩さんがテレビコマーシャルで「マイナンバー」(個人番号)で便利になると宣伝をしていました。実施にあたって、労務管理上の注意点はありますか。


 保団連・保険医協会は実施を見直すよう求めてきましたが、国民が内容をほとんど知らないうちに実施が決まりましたね。労務管理上重要なことは、今後社会保険、労働保険、税金関係の手続きにはマイナンバーが必要になるということです。


 どういうことですか。


 マイナンバーは住民票を有する全員に付番されます。つまり赤ちゃんからお年寄りまで全員です。日本にいる外国人も例外ではありません。これからは社会保障や税に関する書類でマイナンバーが記載されていなければ「氏名」が記載されていないようなもので、そのような書類を役所は受理しないことになってしまいます。2016年1月からは雇用保険関係の書類はマイナンバーを書かなければなりません。その様式も厚生労働省のホームページで公開されています。厚生年金関係は2017年から始まります。


 従業員のマイナンバーはどうやって手に入れるのですか。


 今年の10月以降、市区町村から住民票の住所にマイナンバーの通知カードが簡易書留で送られます。従業員を雇用している方は、この「通知カード」を紛失しないよう、パートアルバイトの方も含めて全員に今から徹底しておくことが重要です。


 マイナンバーを従業員番号にしたら便利かもしれませんね。


 それはできません。従業員のマイナンバーを聞く場合は使用目的を明確にする必要があり、社会保障・税に関する法律で定められた事務以外に使用できません。目的外使用は、罰則の対象になります。これはかなり厳格で、たとえ本人が同意してもマイナンバーを従業員番号などに使用することはできません。


 ほかに注意点はありますか。


 「本人確認」です。これは行政用語を使うと「番号の真正性確認」つまりその番号が正確かどうかの確認、と、「身元(実存)確認」つまり本人かどうかの確認です。具体的には実物のマイナンバーの「通知カード」を見せてもらい、「番号の真正性」を確認し、写真付きの身分証明書、たとえば運転免許証などで本人を確認します。


 大変ですね。


 通知カードが送られてくる際に「個人番号カード」申請書も同封されてきます。この「個人番号カード」はプラスチック製で写真付きです。この個人番号カードがあればこれだけで「個人番号の確認」と身元確認ができます。このカードの発行は当面無料です。


 それにしても個人情報漏えいの危険性はないのでしょうか。


 政府はこのようなマイナンバー制度が先行した米国のグリーンカードのような漏えいはないと言っています。しかし米国でもグリーンカードの見直しが検討されています。国防総省の職員はグリーンカードを持っていないそうです。

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